第13章 憧れに似ているあいつ
ジャン
「彼女のおかげで私はこうして生活を出来ています」
リアム
「あの…失礼ですが、この店は?」
ジャン
「レティシアさんから託されました」
リアム
「レティシアから?」
ジャン
「はい。雇われる事の無い身にれば良いと言われまして…どういう事かと思っていたのですが、この小さいおもちゃ屋を紹介されました」
彼女はここまでするのか…と思うが、それは驚きではなく感心だった。
その計らいのおかげもあり、子供を相手にするのが向いていたらしいジャンはここで生活が出来るようになったと嬉しそうに話す姿をリアムは、安堵の気持ちで見詰めた
リアム
「今日は突然すみませんでした」
ジャン
「いえ…わざわざ、ありがとうございました」
互いに店先でお辞儀をし、軽く挨拶を終えるとリアムは次の住所へと向かう。
写真裏の住所を確認してから表に写る人相の悪い男マティスを見て、今からこの人に会いに行くのか…と緊張で写真を握る手に力が無意識に入っていた。
愛車のバイクを記載された住所に向けて走らせると、金属の叩く音が響く工場へ辿り着く。
リアムは工場の看板を見詰めながら、先程の気弱で優しい男とは違い暴言を吐かれる事も覚悟し、1つ息を吐き出してから工場へ脚を踏み入れた。
事前に連絡を入れておいた為、話は直ぐにつきリアムは食堂へと通され、今は早く脈打つ心臓を落ち着かせるのに必死だ
「あんたか?俺に会いてぇとか言うのは」
低く厚みのある声が背後から聞こえればリアムは弾かれるように立ち上がり振り返る。
その素早さに驚いたマティスだったが、リアムのガチガチさに強面な顔を崩して笑みを吹き出した
マティス
「何をそんなガチガチになってんだ」
リアム
「あ、いや…はは…すみません」
身長はリアムと同じくらいなのに、がっちりとした体型と雰囲気もあってか自分よりも大きく見えるが、笑うと空気が一気に柔らかくなりリアムは思わず力が抜け息を吐き出した。
そんなリアムを気にする事はなくマティスは彼の前に腰を落ち着ける。
それを見たリアムも会釈を1度してから掛けていた椅子に座った