第13章 憧れに似ているあいつ
ジャン
「…彼女は被害者には勿論ですが、加害者にも優しかった。あ…言葉がおかしいですね。…何と言うか、此方が反省し更生の余地があれば…です」
静かに話し出したジャンの言葉に耳を傾けるリアムの疑問に気が付いたのか、男は苦笑しつつも優しいというそれを訂正した。
ジャン
「此方が犯した罪に対して強く反省し、もう二度と罪を犯さず社会に戻りたいと思っていたら彼女が手を差し伸べてくれたんです」
机の上で絡ませた両手を見ながらジャンは思い出す様に少しずつ話すのを、リアムは黙って聞く
ジャン
「私は要領が悪いので職が見付かってもすぐにクビになる事が多くて…職もお金も無くなった時、食べ物を盗みました。その時は空腹を満たすのに必死で無我夢中で盗んだ物を食べていました。ですが…腹が満たされて襲ってきたのは罪悪感。罪を償おうとたまたま通りかかった守護官さんに声を掛けました。…それが、レティシアさんです」
彼の気持ちは分からない。だが、そこまで追い詰められる程に冷たい世界なのかとリアムは僅かにだが思った。
ジャンは机の上に置いていた手を膝に下げて続ける
ジャン
「最初は勿論、怒られました…」
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レティシア
「あんたのした事は許される事じゃない。職がなくて困ってたのに更に自分を困らせて苦しめる事をしたんだぞ」
ジャン
「……はい」
レティシア
「だが…」
ジャン
「?」
レティシア
「あんたが盗みをする程に追い詰められても知らん顔をしている世の中も悪いのかもしれねぇな」
ジャン
「……ぇ」
レティシア
「自分の過ちに気が付いて申告したあんたは、罪の意識なんか無い奴に比べたら偉い方だ」
ジャン
「後悔しか…ないです」
レティシア
「その後悔は一生持っておけ。次にしねぇように。…で、あんたが外に出てきたら私が責任を持って食えるようにしてやる」
ジャン
「………」
レティシア
「なんだ」
ジャン
「いや…何か、プロポーズの様だなと」
レティシア
「あ…。はは、プロポーズではないが言葉に嘘はねぇ。ちゃんと罪償え」
ジャン
「はい」
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その話にリアムは自分も感じた事を彼女が思っていた事よりも、何ともレティシアらしい声掛けに思わず笑ってしまった