第12章 "印"
【ソフィア·プティ】
髪と瞳がスカイブルーの可愛らしい女の子は、最初からおどおどしていたわけでは無かった。
彼女は魔法が無いにも関わらず両親から愛情を注がれずに育った。
必要最低限、生きられる分だけの飲食だけ与えられ
外へは家についていた庭だけしか許されず
学校など通わせてもらえる事もなく…
ただ、1つ許されたのはパソコンを触る事だった。
何も学ばずに過ごしてきた彼女は知りたい欲求が強く唯一与えられたパソコンの中に広がる世界から色んなものを学び知識をつけていった。
学べる事が嬉しかった彼女は気が付けば…ハッキング能力が自然と身に付いていた
だが勿論それは何かを知り、自分の知識にする為にやっていた行為だっただけで…それが悪い事だなんて知るわけもなかった。
元々ギャンブル好きだった両親は、いつも負けてばかりで生活は荒れ…ソフィアが10歳のある日、霊媒師だと名乗る女を母親が連れて家に帰ってきた
母
「ど、どうでしょう…」
霊媒師
「ほぅ…これは良くないです」
父
「良くない…とは」
霊媒師
「悪霊が取り憑いています」
両親
「えぇっ」
霊媒師
「だから、悪い気が溜まって上手くいかないのでしょう」
すると、霊媒師の目はタイピング音を響かせているソフィアへ向けられた。
ソフィアの後ろに立った霊媒師の口元は僅かに弧を描く
霊媒師
「この子は?」
父
「む、娘のソフィアです」
霊媒師
「貴方がたは素晴らしい!」
父
「え…?」
突然、両手を広げる霊媒師の言葉に両親は隈が刻まれた目を丸くして首を傾げる
霊媒師
「この家の悪霊を払いこの子が居れば良い事ばかり起きるでしょう!」
両親
「え…っ」
両親はこの時、初めて娘の存在に感謝をした。
液晶の中の世界に夢中になっていたソフィアは、騒がれても気が付かなかった。
だが、両親が思わずソフィアを抱き締めると液晶から目を離して驚く
初めて感じる両親の温もりに戸惑った表情を浮かべるも、次第に嬉しそうに目元が緩む