第10章 他を守る者へ
安全な場所まで誘導すると女性は今度こそお礼を述べて、避難場所へ走って行った。
ノア
「リアムくん!オレはあっちの方に行くから、君はそっちに人が残って居ないか確認してきて!」
リアム
「はい!」
指をさして示される方へ1度だけ顔を向けて、すぐにノアへ返事をする。
それを確認したノアは魔法を使って飛んで行った。
リアムは勿論、魔法なんて無いため脚を動かす
時々見えるレティシアとルシアンの動きは、とても連携が取れていて誰が見ても大型魔獣が翻弄されていると分かる
リアム
「誰か居ませんか!」
人々の思い出が詰まった家が数軒潰され火に包まれる場所でリアムが叫ぶ。
「……っ…く、ださい…!」
すると、火混じりの風と共にリアムへ届いた微かな声に反応して顔を向ける。
そこには一人の女性が座り込んで助けを呼んでいた
リアム
「どうしました!」
慌ててリアムが駆け寄り、女性が顔を上げ彼の存在と紋様に僅かに安堵の表情を覗かせる。
女性
「む、息子が…っ…柱の下敷きになってしまって…!」
女の子
「お兄ちゃん…っ…」
リアム
「…っ…これは」
上半身は外に出ているものの下半身部分が潰れた家の中に取り残され、柱に挟まっている男の子は苦しそうに表情を歪めている。
小さな女の子は傍らで泣き、母親は柱を退かそうと必死だ
リアム
「危ないですから、離れてください…!」
母
「…は、はいっ…お願いします…」
1人だけで落ち着かせて作業に取り掛かる…それがどんなに大変な事なのかリアムは実感する。
そんな自分も落ち着かせてリアムは小さな身体の上に乗っている柱を掴む
リアム
「お、っも…」
力一杯で持ち上げるものの、想像以上にその柱は重くリアムは歯を食いしばりながら持ち上げるが僅かしか上がらない。
ふと、リアムは自分の至らさにハッとして振り向く