第8章 大切で残酷な暖かい過去
驚く程、進展も無いまま月日は流れ…
レティシアは20歳、ルシアンは26歳になっていた。
その頃にはノアとオリヴィア、ソフィアもヒガンバナ基地の仲間になっていた
メディ
「今回、ルビー基地の指揮官長が年齢を考え現役を退く事になった為、ヒガンバナ基地とネリネ基地の指揮官である君達のどちらかになってもらおうと思う」
司令官室に呼び出されたヒガンバナ基地の指揮官であるレティシアとネリネ基地の指揮官である、紳士的な雰囲気のシモンが並んでいた
だが、そんな大役は御免だと思っているレティシアは面倒臭そうに自身の爪先を見下ろしていた
メディ
「そしてその答えは、もう出ている」
シモン
「………」
メディ
「レティシアくん、やってくれるね」
自分では無いと思っていたレティシアは、爪先から視線を滑らせてメディを見て、思わず自分を指さす。
それにメディはしっかりと笑んで頷いて見せた
メディ
「頼んだよ。指揮官長就任は1週間後だ」
レティシア
「…分かった」
その答えに1人シモンは悔しそうに拳を痕が残る程、握り締めていた
ユリス
「何だ、何かあったのか」
レティシア
「え?」
ユリス
「不安そうな顔してるぞ」
レティシア
「……うん」
2人で壁に背を預けながら並んで座っている時、ユリスから問われたそれに小さく返すと、彼の肩にレティシアの頭が乗る。
唯一、レティシアが甘え弱気になれるのがユリスの前だけだった
レティシア
「1週間後…ルビーの指揮官長になれって、メディに言われた」
ユリス
「とうとう指揮官長か。…やりたくねぇのか?」
レティシア
「正直。私は誰かの上に立つ程凄くない。…未だにユリスを外に出してあげられてない」
ユリス
「そんなのは良い。…俺の娘は優秀だ。10歳でヒガンバナの指揮官になって、ちゃんと纏めてきただろ。大丈夫だ」
そう言ってユリスは肩に乗っていたレティシアの頭を引き寄せ、抱き締めてやる。
レティシアは昔から変わらない安心する匂いや暖かさのユリスに、頬を緩め目を瞑って彼の背中に腕を回した