第8章 大切で残酷な暖かい過去
レティシア
「楽しそうな事をしてるじゃないか。私も…交ぜてくれないか?」
檻の前には冷たい瞳を宿したレティシアが立っていた。
それを見た男達はユリスから離れる
男2
「ちっ…レティシアか」
レティシア
「てめぇの弱さを他人に八つ当たりしてんじゃねぇよ。…あぁ、こんな事しか出来ないからてめぇ等は弱いんだったな。すまない、間違えてしまった」
腕を組み薄らと馬鹿にした様な笑みを浮かべながら吐き出されるレティシアに、男達は青筋を立てる
男3
「てめ─…」
レティシア
「悔しかったら努力しろ。この腰抜けが」
男の声を遮って強く放たれた言葉に1人も何も言えなかった。
そして、鍵が開いていた牢を開いて中に入ると未だユリスを跨いで立っている男を見上げ
レティシア
「退け」
男1
「……っ」
レティシア
「…聞こえなかったか?退けと言ったんだ、クソ野郎」
14歳が放つ様なものでは無い威圧感に男は僅かに震えながら退く。
それを見たレティシアは、顎先だけで去るよう指示をすると男達は渋々その場を去っていった
レティシア
「大丈夫か?」
レティシアは床に膝をつくとボロボロのユリスを起こしてやる。
ユリス
「嗚呼…だが、お前は相変わらずだな」
レティシア
「何の事だか」
ユリス
「やれやれ」
相変わらず、というのは幼い頃からユリスが関わると普段よりも口が悪くなるという事だ。
彼女の返事に呆れていたが、レティシアは眉を下げてユリスを見る
レティシア
「いつからだ」
ユリス
「あー…半年前…だったか?」
殴られる度に魔法で治していた為、その事に気が付けなかったレティシアは悔しくて下唇を噛んだ。
自分が辛かった事を大切な人に味合わせてしまったのが情けなくもなった
ユリス
「お前は…こんな痛みにずっと耐えてたんだな」
レティシア
「…え…、」
ユリス
「あんなちっせぇ身体でずっと暴力に耐えてたんだな。…今更だが、良く頑張ってたな。それが…今じゃ俺を助けてくれるくらい強くなったなんて、俺は嬉しいわ」
レティシア
「…助けれてないだろ。こんな怪我させちまったし」
先程とは違う弱々しい声を吐き出すレティシアを見てユリスは優しく頭を撫でてやる