第8章 大切で残酷な暖かい過去
エドゥアル
「寂しい事を言うんだね。…でも、証拠は無いだろ」
レティシア
「……、」
エドゥアル
「それじゃあ、無理だよね」
心のない笑みを貼り付けたままエドゥアルは、腰まで伸びる白い髪を揺らして去っていった。
ほぼ確実にエドゥアルが悪いのに、その証拠がない事がレティシアは悔しくて奥歯を噛み締める
ユリスが逮捕された日からレティシアは時間が出来ると彼に会いに行く様になった。
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薄暗いコンクリートの牢獄に数人の怒鳴り声と小さく零れる呻き声が響いていた。
男1
「俺は…ずっとお前に従うのが嫌だった。司令に気に入られて入ったかなんか知らねぇけど、シンメに行かず苦労せずに入った…俺よりも下のお前に指図されるのが、ずーっと嫌だったんだ!」
ユリス
「知るかよ。…俺の方が優れてたんだから仕方ねぇだろ」
男1
「巫山戯んな…!」
ユリス
「……っ…」
13歳で補佐官になったユリスに対する14年間、燻っていた感情をぶつける様に吐き出し力のままにユリスの頬を殴る。
唇が切れ、親指で血を拭いながら起き上がったユリスにもう1人が近付き、左目を覆っていた眼帯を剥ぎ取った
ユリスは黄色と赤色の瞳で男等を見上げる
男2
「気味の悪い目だな。その目で色んなものが見えてたんだろ。それを自分が考え閃いてるみたいに言ってたんだろ」
ユリス
「はっ…そんな便利な目なわけあるか。どんな思考してんだよ、お前」
馬鹿にしたような乾いた笑みを零すユリスの姿に腹を立てると、座っているユリスの先程とは逆の頬を蹴った。
思い切り床に身体を倒すも、ユリスはゆっくりと座り直す
男3
「お前さえ居なかったら、こんな気分にならなかった!」
男4
「そうだ…偉そうに俺等を見下しやがって!」
ユリス
「…っ…く、っ…」
無抵抗なユリスを4人の男は殴る蹴るを繰り返し、銀の髪を掴んで床に押し付けたりと酷い仕打ちを繰り返した