第3章 身をもって
ノア
「この特別室は簡単に言っちゃうと魔獣を取り締まる所なんだ」
リアム
「え…魔獣を、ですか?」
ノア
「そ。小型を飼ってる人達が多いっしょ?」
リアム
「はい。というよりそれは別におかしな事でも無いですし、危険でもないですよね。何故、魔獣を取り締まるんです」
魔獣はこの世界では当たり前の生き物で、小型の魔獣を飼っている人達も多く、愛された存在である為リアムには何を取り締まるのかが理解出来なかった。
レティシア
「小型じゃない。私達が取り締まるのは大型の魔獣だ」
リアム
「えぇ!?…大型の…?」
答えたのはノアでは無く隣に座っていたレティシアだった。
レティシアの膝の上にはいつの間にか白い虎が眠っていたが、良く見ると額からは小さな角、背中からは小さな羽が生えており魔獣であるのが分かる。
ノア
「大型の魔獣は野生しかいないっしょ?」
リアム
「はい。…教科書でしか見た事ないですけど…」
ノア
「その大型が時々、暴走すんだよね。それを俺等が鎮ませんの」
リアム
「それが、特別室の仕事…ですか?」
ノア
「そ」
頷くノアの言葉にリアムは絶望にも似た衝撃を与えられた。
リアムには元々、憧れている人物がおりその人が人間を捕まえていた事で守護官を目指して頑張ってきた。
先程まで自分が昇格したと思っていたがそうでは無かったんだと思い、リアムは肩を落とした
リアム
「あ゙ー、俺が捕まえたかったのは人間であって魔獣じゃねーんだよな……ぁ、やべっ」
気付いた時には思わず本音が零れてしまっていて、リアムは慌てて口を覆う。
だが、勿論そんな行為は遅く
レティシア
「やる気出ないか?」
レティシアから問われたそれに、もう零れてしまったのだから開き直るしかないと、リアムは口から手を離す
リアム
「まぁ…魔獣、鎮ませんのなんか犯罪者、捕まえるより簡単ですよ。やり甲斐なさそ…」
レティシア
「ふーん?…まだ体験もしていないのによく言う。けど、人間よりも魔獣の方が大変だぞ」
膝の上にいる虎の様な魔獣を撫でながら本音を零した事により、態度に丁寧さがなくなるリアムを見てレティシアは悪い笑みを浮かべた