第8章 大切で残酷な暖かい過去
レティシア
「言ったろ。…ジルなら大丈夫だって」
振り向いて投げられた言葉にユリスは降参するように両手をあげてレティシアに近付く。
ユリス
「悪かったよ、疑ったりして。…ジル悪かったな」
ルシアン
「俺も…ユリスの言葉を聞いて、少し疑っちまった。すまない」
視線を向けられたジルヴァは小さく鳴き、それに答えた。
その日はジルヴァの姿が格好良いと、小さくなったジルヴァを見ながら暫くその話に花を咲かせた。
それからもレティシアは指揮官として活躍し、ルシアンとジルヴァはそれを支え…ユリスと変わらず楽しく生活をしていた。
だが、少しづつ歪み始めていた歯車はレティシアが14歳、ルシアンが20歳の時に歪んだまま動き出し…
任務を終えて戻って来たレティシア達の元へ、慌てた様子で部下が駆け寄ってきた
部下
「大変です、指揮官!」
レティシア
「どうした」
部下
「大変なんです!」
レティシア
「それは聞いた。落ち着け、何が大変なんだ」
意識的に変えていた口調はすっかりユリスと同じになっていたレティシアは、まさに第二のユリスだった。
落ち着けと促された部下は1度、息を吐き出すとレティシアを見据え
部下
「ユリス補佐官が…逮捕されました」
─バンッ
メディ
「君かユリスくん位だよ、司令官室の扉をそんな乱暴に開けるのは」
司令官室で資料へ目を通していたメディが呑気にそんな言葉を零すが、レティシアとルシアンには関係無かった。
レティシア
「どういう事だ、ユリスが捕まったって」
メディ
「あぁ…その事か。私は彼を信頼している、それは君も知っているね」
レティシア
「………」
それが何だと問いたい気持ちを抑え、レティシアはメディを睨む
メディ
「だから、残念だよ。彼が何者かに組織の情報を流していたなんてね」
信じられない言葉に2人の眉間にはシワが刻まれた