第8章 大切で残酷な暖かい過去
すると、ジルヴァの身体を白い光が包み込みその場に居た全員が、眩しさに目を瞑る。
光がおさまり瞼を持ち上げ、3人が見たのは本来の姿に戻ったジルヴァだった。
目の前の大型魔獣よりも大きく。
小型の時の可愛らしい姿では無く、額に生えていた小さい2本の角は反り返り所々尖っており、小さかった羽も大きく立派で…尻尾の先端は尖りとても勇ましい姿になっていた
レティシア
「す、凄い…」
ルシアン
「これが…ジルの、本来の姿」
ユリス
「圧倒されるっつーのは、こういう事を言うんだな」
ジルヴァは目を鋭く尖らせ1度、咆哮を響かせると怯んでいる大型魔獣に、白に映える虎特有の黒い模様をした太い脚を振り下ろして狐魔獣を攻撃する
3人は歩くだけでも凄い振動に耐えるように木にしがみつく
狐魔獣
「グルル…!」
ジルヴァ
「ヴゥ゙…!」
低い唸り声を上げてぶつかり合う2頭を見詰めていると、ジルヴァが自分よりも小さい狐魔獣の首に噛み付いて飛ばす。
それに適わないと感じたのか、狐魔獣は森の奥へと姿を消した
レティシア
「ジル…!」
ユリス
「待て、レティシア」
レティシア
「何…?」
ユリス
「お前の魔力で大小魔法をかけているとはいえ、ジルは今生まれて初めて本来の姿になったんだ。理性を保てている保証は無い」
レティシア
「そんな事…そんな事ない!ジルなら大丈夫だ」
ユリス
「レティシア…!」
ユリスに掴まれた腕を振り払ってレティシアは、ジルヴァの前に飛び出る。
それを見たジルヴァは唸りながら彼女に1歩近付く
ユリスとルシアンは止めたい気持ちをぐっと抑え見守る
レティシア
「…ジル」
呼び掛けを聞いたジルヴァは大きな咆哮をあげ、また1歩近付き頭を下げる。
その姿は誰が見ても理性をなくした獣ではなく、信頼している彼女に示す忠誠のようにも見えた
レティシア
「ジル…助けてくれて、ありがとう」
頭には手が届かなかった為、レティシアは優しくジルヴァの鼻筋を撫でながらお礼を述べた。