第8章 大切で残酷な暖かい過去
─別の日…
ユリスは少しづつでも何かを知りたくて、エドゥアルを探る事にした。
自分がどうしようも無い人間であった事の自覚があるユリスは、そんな自分と共に過ごしてくれた幼馴染に何らかの疑念を抱き、怪しまなければいけないこの状況が嫌だった。
だが、それにレティシアが関わっているかもしれないとなれば…動くしか道はない
ユリス
「BT…?」
誰も居なくなったゼフィランサス第一室でエドゥアルのパソコンを覗くと"BT"という文字が何度も現れた。
ユリスは顎に手を添えて考える
ユリス
「BT…何かの隠語か…?」
1つ確実に分かったのは、任務とは関係ないものをエドゥアルは探しているという事だ。
ユリスでも知らない何かを探しているらしい、それしか分からない事がもどかしくて仕方無かったが、その日は帰る事にした。
その帰り道、森の方からユリスが唯一感じとれる慣れ親しんだ魔力の気配に不思議に思いながら、そこへ脚を向ける
ユリス
「こんな所に何の用があるってんだ」
夜の森は普段よりも暗い為ユリスは魔法で脚元を照らしながら歩んでいくと、一気に開けた場所に出て…そこに感じ取った魔力の人物も居た
ユリス
「レティシア、何してるんだ」
レティシア
「え、ユリス!?」
ユリス
「ルシアンまで…勤務時間は終わっただろ」
レティシア
「それが…ジルがこの森に入っちゃって」
ルシアン
「言う事聞かねぇんだ。あっちの深い方を見たままずっと唸ってる」
それに促されるようにレティシアの脚元で闇しかない場所を見ながら、聞いた事無いくらい唸っているジルヴァがいた。
レティシア
「ジル、何も無いから…早く帰ろう」
暗い所や怖い物が苦手なレティシアは、珍しく頼りない声でジルヴァに声を掛ける。
勿論それに答える事はなかったが、次には先程まで動かなかったジルヴァがレティシアを守る様に前に歩み出ていた