第8章 大切で残酷な暖かい過去
時計を見上げるのと、ほぼ同時に玄関からユリスが帰宅した音がし、それに反応したジルヴァが慌てて玄関に迎えに行く。
これが最近の恒例で、ジルヴァは必ずユリスやルシアンを迎えに行く様になった
ユリス
「ただいま。…ん?良い匂いだな。もう飯が出来てるのか」
レティシア
「そ」
ユリス
「どれどれ…」
レティシア
「ジル!」
ジルヴァ
「にゃう!」
ユリス
「おわ…っ」
レティシアの声に従いジルヴァがユリスの裾を噛んで引っ張る
ルシアン
「ユリス…」
ユリス
「分かってるっつーの。手洗って着替えてきますよ」
憐れむような視線を送るルシアンにユリスはそう答えてリビングから消える。
レティシアは、暴力に怯え守られていただけの少女からすっかり変わり、ユリスは手がかからなくなった娘に嬉しい様な悲しい様な感情を手を洗いながら感じていた
手を洗い服を着替えたユリスが椅子に座る頃には良い匂いを纏い、湯気をたたせている食事がテーブルに並んでいた。
挨拶をしてからレティシアとルシアンは、ユリスの手の行き先をチラチラと伺っていて、ユリスが肉団子を取ると2人は顔を見合わせる
ユリス
「ん?この肉団子、美味いな」
レティシア
「本当?」
ユリス
「本当」
それを聞くとレティシアは嬉しそうにガッツポーズをし、目の前のルシアンとハイタッチをする。
ハイタッチの理由が分からないユリスは、2人を交互に見る
レティシア
「その肉団子…ピーマン入ってんだよ」
ユリス
「は…まじ?」
ルシアン
「まじ」
ユリス
「すげぇな。ピーマンの味、全くしねぇ」
レティシア
「おーっし!ユリスを驚かせたぞ」
ルシアン
「やったな、レティシア」
ユリス
「そんなに喜ぶ事か…?」
2人の様子に苦笑するも、本当にピーマン入り肉団子が気に入ったらしく沢山食べており、レティシアはそれがとても嬉しかった