第8章 大切で残酷な暖かい過去
ルシアン
「レティシア、少し休んだらどうだ」
レティシア
「もう少しで終わるから」
ルシアン
「けど、お前ずっと働きっぱなしだろ。倒れるぞ」
レティシア
「平気」
ルシアン
「平気じゃな─…」
「僕達がやります」
レティシア
「え…」
レティシアが指揮官になって11歳の頃、中々休まない彼女にルシアンが話し掛けていた時、遮るようにして入ってきたのは…これまで命令違反を繰り返してきた部下達だった
部下1
「…今まで命令違反をしていて、すみませんでした」
部下2
「年齢がとか馬鹿な事ばかり気にしていました。私達は命令違反を繰り返して…私情を優先して、守護官失格だと思います」
部下3
「僕達が命令違反をしても何故咎められないのか…ユリス補佐官が、教えてくれたんです」
ユリス
『お前等、命令違反とは随分…巫山戯た事をしてんだな。良いか、お前等がクソみてぇな感情で命令違反をしても司令官に咎められねぇのはな…レティシアが、庇ってるからだよ。あいつは、自分が弱いから誰も従わないって言ってんだ。…あー、けど…お前等の命令違反で落ち込んではねぇから安心しろ』
そうどこか皮肉るようにユリスは笑っていた。
部下3
「本当に申し訳ありません。これからは心を入れ替えて頑張りますので、僕達に指示をいただけないでしょうか」
一斉に頭を下げる姿を見てレティシアとルシアンは、互いに顔を見合わせて驚いたものの次には笑っていて
レティシア
「…宜しく、皆」
こうして漸くヒガンバナ基地はレティシアが指揮官として、潤滑に動き出した。
そしてユリス譲りの優秀さを受け取った彼女の口調は、段々と彼に似てきた…というよりも意識的にレティシアは変えていた。
彼女の中の格好良さや部下を持つものの強さは、ユリスの姿なため必然的に彼女の尊敬がそうさせた。
ユリスは娘の成長に喜び誇りに思いながら過ごしていた。
このまま、幸せだと感じながら過ごしていくんだと思っていたが…ある日からエドゥアルの様子に違和感を持ち始める。
明確な何かはないが、頻繁に来ていたユリスの家に訪れる事はなくなり…レティシアへ向ける視線が、どこか異常なものに見えて仕方がなかった