第10章 ※シャボンディ諸島
「…余計な事すんじゃねェぞ」
「……分かってるって何回言ったら、てめェは気が済むんだよ…っ」
ワナワナ、と肩を震わすキッド。
そうしながらも、先程ローがしたように、真鈴の前にしゃがみ込んだ。
「じゃあ…いただくぜ?」
真鈴の手をとる。
「うん。」
キッドの唇が怪我のところに近付きー…
「…っ」
「‼︎」
真鈴もキッドも身体を震わせた。
「苦ェな…鉄の味がする…」
「そりゃ…血だし…」
しばらく‘‘血”を吸っていたキッドだったが、不意に傷口を外れ、手のひらをなぞるように舐めた。
「ひゃっ⁉︎」
ゾワリ、と背中に何かがはしった。
「‼︎」
「…どわっ⁉︎」
真鈴の変化に気付いたローは、目に見えない程の速さでキッドを突き飛ばした。
「余計な事はするなと言ったはずだが…?」
ローの額に怒りマークが浮かび上がっている。
「からかってみただけだ。…面白ェ反応するなァ、こいつ…」
「…もうこいつに触れんじゃねェ、帰れ。」
ローはキッドに近付き、真鈴に聞こえない声量で言った。
「…………………てめェ、本当はこのおん」
「目的は果たしたんだろ? 早く帰れよ、船長が長いこと船を離れてどーすんだ。」
「……。」
「帰れ。」
「分かった、帰るよ、帰ればいいんだろ‼︎」
「当たり前だ。ココにいる理由がねェだろうが。」
「…っち…あァ、帰るとするよ」
キッドが壊れた扉の近くまで行った所で、ローは警告した。
「…次船壊しやがったら、金倍にして請求してやるからな」
「……勘弁してくれ…というか、次会う時はお互いに潰し合う時だ」
「あぁ…そうだな。」
「じゃあな、真鈴‼︎ …ついでにトラファルガー」
キッドはこちらを振り向き、真鈴にだけ手を振った。
「‼︎ はい…さよなら」
「ついでって何だ、ついでって…っ」
「へっ‼︎ じゃあな‼︎」
扉から出て、そのまま陸に飛び降りた。
ローも続いて飛び降りる。
キッドを見送り(という名の見張り)に行ったようだ。
…真鈴はふと、傷を見たが、血はもう止まっていた。