第20章 力の代償
ローは真鈴が寝ているそばに座った。
ギシ…と寝台が軋む。
真鈴の顔色を見ると、先ほどよりは良くなっている…ような気がした。
「だんだん回復してきているのか? 顔色がさっきよりマシだな…」
(この調子で早く回復して目覚めてくれりゃいいが…)
もしこのまま目覚めなかったらー…
(糞……痛ェ…っ)
ズグズグ、と心臓に何かが突き刺さるような感じがした。
とっさに胸を抑える。
(…大丈夫なはずだ)
大丈夫、と自己暗示をかけ続けた。
…少し痛みがマシになった。
真鈴の顔を再び見つめ、自分も横になった。
ローの目の前には真鈴の寝顔がある。
そっと頰を撫でた…がやはり何も反応しない。
手を離す。
真鈴を自分に引き寄せ、抱き締める。
真鈴の身体の暖かさに安堵し、睡魔がローを襲った。
「俺も…少し休むか」
目を瞑り、すぐ眠りについた。
…数時間後。
ローは目を覚ました。
「…」
無言で起き上がる。
ふと時計が目にはいった。
只今4時。
昼ご飯は食欲が湧かなく、食べなかった。
「…あ」
真鈴を抱き締めたままだったことを思い出した。
少し身体を離す。
「…真鈴」
ダメ元で名前を呼ぶが、やはり返事は返ってこない。
「チッ……もう夕方だぞ…何時になったら目を覚ます…‼︎」
(本当に1日中こうなのか…⁉︎)
またズグズグ、と心臓に何かが突き刺さる感じが蘇った。
(糞…っ、気持ち悪ィ…)
ローが再び苦しそうに胸を抑えた、その時。
「船長ー…失礼します‼︎」
シャチが扉を開け、部屋の中に入ってきた。
「おまっ…ノックぐらいしやがれ…‼︎」
「あ、すみません…忘れてました。それで船長‼︎ 真鈴ちゃんは…?」
シャチ達船員達は、お昼に2人が現れなかった理由が、“真鈴の調子が悪く、船長が付きっきりで看病している”、と聞かされている。
「真鈴なら…こ」
「船長⁉︎ どうしたんですか⁉︎」
苦しそうに胸を抑えているローに気がつき、焦り始めるシャチ。
急いでローに駆け寄った。
「あ…いや、なんでもねェよ。」
「でも今…‼︎」
「大丈夫だ。」
「ぅ……はい、分かりました…でも‼︎しんどい時は休んで下さいよ⁉︎」
「あァ、分かってる」