第11章 ‘‘癒しの力”
呆然とする真鈴。
「大丈夫なのか…?」
「あ、体力はもう大丈夫だよ‼︎」
「体力もだけど、聞きてェのはさっきのことだ。‘‘漆黒の靄”とかなんとか…」
「‼︎」
真鈴の顔が一気に曇った。
「な、んでそのこと、知って…」
ーその時、船が揺れ、真鈴が身体のバランスを崩し、寝台から落ちそうになった。
「おい…大丈夫か?」
すかさずローが真鈴を支えた。
「………うん」
「‼︎ お前…」
真鈴は軽く震えていた。
「震えて…」
「あ…気にしないで…ちょっとね…はは」
…無理矢理笑顔を繕っているのが、いやほど分かる。
それを見たローは、胸が締め付けられたように、胸が苦しくなった。
…無意識に真鈴を抱きしめた。
真鈴の頭を自分の胸へ引き寄せて。
「‼︎」
「無理矢理笑うんじゃねェ……言うのが嫌なら言わなくていい。」
(俺は、屈託のねェお前の笑顔が好きなんだ…無理矢理な笑顔作らせたくねェし、見たくもねェ…‼︎)
抱きしめる腕の力を強めた。
…真鈴の身体の震えがマシになる。
「ロー…大丈夫よ、ありがと」
真鈴はローの身体をキュッ、と抱きしめ返した。
「‼︎ あ、あァ…」
しばらく抱き合っていた二人だったが、真鈴の方からくちを開いた。
ローの胸板を押し、顔を上げる。
必然的にローと目が合った。
「あの……ロー、もう大丈夫、だから…えと、そろそろ…」
真鈴が顔を赤くしながら言った。
…先程から二人は抱き合っているのだ。
真鈴に正気が戻ってきて、この状況にだんだん恥ずかしくなってきたのだった。
心臓もあり得ない程バクバク鳴っている。
「…落ち着いたのか?」
「うん…おかげさまで…」
「そうか。」
「…っ」
真鈴の頭を撫でる。
(今なら…ローに言えるかもしれない…)
ゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「ロー…き、聞いてくれる? し…‘‘漆黒の靄”の話…」
ピクッとローの身体が反応した。