第1章 【氷月】ちゃんとお嫁に来て下さい
「……っ……!!!」
意外だった。その人物は、直ぐに見つかった。
……神に懺悔を希う様に右膝をついて、両手を組んで座り込む女性の石像。
間違い無かった。ーー桜子だ。
彼女がした様に、地面に片膝をつきしゃがむ。思わず口元のマスクに手が伸びた。息のしやすくなった口元で、桜子の顔に口元を寄せる。誰にも聞こえない声で呟いた。
「……見つけた」
再度立ち上がると、懐から石化復活液を出す。
服を着せる事無くだばだばと復活液を頭に垂らす氷月の姿に、え、氷月さん!?服は…!?てかその人なんですか!?!?
と部下が慌てふためいていた。
ピキピキ……パキッ……
カンッ!!!
懐かしい、あの頃の槍のぶつかる音がした気がした。
彼女の頬からヒビが入ったかと思うと、それが直ぐに全身に波及。やがて全ての石化状態が解除された。
「…………」
そっと目を開いた桜子が、焦点の定まらない視線で自分の両手を開いた。
……彼女の両手で覆われていたからなのか、石化しても何とか原型を留めていた、見慣れた銀のロザリオがぽとりと落ちる。
彼女が見上げれば、そこに居たのは長身の男性。
「……ひょ、うが…くん…?」
「…………そうですが」
暫く会って居なかったのに、第一声に寸分違わず自分の名前を呼ばれた。そのせいか、返事が遅れた。
目の前の女性は全裸で立ち上がると、くるくると周りを見渡す。
「……あー……これは文明滅びちゃってるやつだね。あの変な光線から時間が相当経ってる。生活は……縄文レベルだね」チラッと氷月達の服装を見遣り彼女が言う。
「察しがいいですね」
「ふふ……でも、」くすくすと桜子が笑う。
「氷月君は全然、変わってないね?」
安心しちゃった、と微笑む。
正直自分からしたら変わったつもりだが。どうやら目の前の人間からしたら違う様だ。