第1章 【氷月】ちゃんとお嫁に来て下さい
彼女の居場所は、大体目星が付いていた。許嫁、というのは中学に入った頃に正式に向こうから彼女を通して話が来ており、話も纏まっていた。勝負の約束通り、自分が婿養子になる話だった。
ただ桜子の方が変に研究やら役者業やらに手を出し過ぎて多忙だったのと、自身が尾張貫流槍術の次の継承者としての地位を確立しきる為、まだ身を共にする気が無かったので引き伸ばしていただけだ。
××帝国東大学。日本有数の歴史学の大学だ。
彼女の話は親から伝え聞いている。やめろと言っても勝手に連日大学の研究室に泊まり込む、問題児らしい。
「えーーと……ここら一体探すんですか?氷月さん……??」広くない?範囲やばくね?俺ら殺す気??と部下達が震えている。
が、そんな事はどうでもいい。
「早く探して下さい。特徴は頭に叩き込んでますね。出た石像で条件に合うのはそちらに並べて下さい」
氷月が淡々と指示すると、脳の溶けた部下達がひぃーーと言いつつ必死に石像を掘っては並べる。
「こんなんでいいですかぁ…」
暫く近場の岩に座り込んで居ると、部下の1人が報告に来る。
無言で石像の列を見る。
「……明らかに違う特徴の石像が混ざってますが」
「ひっ」
「ちゃんとして下さい」
気付かれない程度に溜息をつく。あまり期待せずに、一応石像を検査する。