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dcst 夢小説 短編まとめ

第3章 【ルリ】君にありったけの幸福を


 薬を飲み続け、ひたすら咳に耐えること数日。
「……ルリ。僕だよ。気分はどう」
「桜子……!」
 共に病を闘い抜いた桜子の手に、ルリは縋りついた。同じようにサルファ剤を飲み続けてからというものの、ルリの咳も最初酷くなったものの徐々に収まり。咳で眠りを妨げられる事も無くなった。起きて真っ先に視界に入った王子様の姿に、ルリは歓喜した。彼がコクヨウ達を誘って花畑へと誘う。
「もう何年ぶりかも忘れました。村の外に出られたのも、走れるのも……!」
「あ、こらルリ!待ちなよ。はしゃぎたくなる気持ちは分かるけどね」
 走り出すお転婆なお姫様に、桜子が後を追う。本来ならば見送るしかなかった二人分の命を千空は救ったのだ。彼らが走り駆け回り遊ぶ姿に、クロムや皆がしみじみと見入っていた。もうこの様子なら大丈夫だろう、と二人きりにしてもらった。花畑を歩きながら、ルリが桜子に提案する。
「私と四葉のクローバーを探しませんか」
「いいよ。どっちが先に見つかるかな」
 そんな子供の時ぶりの勝負をしては、ルリがまた先にクローバーを見つけた。今度の勝負もまた私の勝ちですね、とルリが桜子にクローバーを差し出す。
「お願いです。このクローバーをあげますから、どうか幸福を私と分かちあって貰えませんか。一方的に私が貰うのは嫌なのです」
「ルリ……」
 彼女の差し出したクローバーを、彼は受け取った。
「うん、誓うよ。ルリ。僕はね、君が笑ってるのが好きだ。真面目に仕事をする姿も、昔みたいにはしゃいだりお転婆な所も。ずっとこの身体では言えないと思ってたけど、今なら言えるね。……愛しているよ。どうか僕と夫婦になってもらえませんか」
「……!」
 あげた筈の幸福が、倍になって返ってきたようだった。告白に真っ赤になって戸惑うルリに、ははと桜子はいつものように笑ってみせる。
「……やっぱり巫女様は御前試合の優勝者と結婚て決まりだし、僕では頼りないかな」
「そんな事はありません。貴方が今日まで私の心を支えてくれたから、今こうしてられるのですから」
 そっか、じゃあ決まりだねと彼が笑ってルリの身体の下に腕を通した。ルリの視界がぐらり、と揺らぐ。あっ、と思った間にはお姫様抱っこをされていた。
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