eat me!!【HUNTER × HUNTER】【短編集】
第2章 弾けて溶かして。【キルア】
俺は悩まされていた。
「また振られちゃった〜」
"私のどこがいけないのかな"
クリームソーダのアイスの部分を沈めながら仏頂面をする、目の前の女に。
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「これで4人目だよ?なのに全員と1年続いたことがないの」
「そんな奴ザラにいるだろ」
「いやいや、この年で既に4人目はマズいって」
似たような話を聞くのもこれで4回目。こいつは俺の友達で、今までだって何度も相談に乗ってきた。まぁ最も、友達だと思っているのは向こうだけで、俺は1度もそんな風に思ったことなんてないけど。
喫茶店の暖房が直撃するテーブルに座ったせいか俺のアイスは既に溶けかかっていて、今にもメロンソーダの海に沈没しそうだった。
「『私のことが理解できないし、理解しようとも思わない』だってさ!そんなキツいこと言わなくてもいいと思わない?そもそも、違う環境で生まれ育ってきた私たちが全て理解し合うことなんて有り得ないのに」
…確かにそうだな、と思う。俺だって、セレナのことを完璧に理解出来ているかと聞かれたら、はいそうですと即答できる自信はない。俺に至っては暗殺一家に生まれ、ついこの前まで暗殺者として感情を殺し任務をこなすことが日常だった。それに比べセレナは、俺とゴンの旅の途中で出会った一般人で、血とは無縁の環境で育ってきたんだ。
俺たちでさえ、互いのことを100%理解することなんて出来ない。けどそれが普通で、理解し合おうとしなくたっていいのだ。
まぁこいつの場合、ただ単純に男運が悪いことが大半だけどな。
「キルアは好きな人とかいないの?」
「なんだよ急に…ま、いないこともないけど」
「…え?!」
俺の返事は予想外だったらしく、ダンッと勢いよく机に手をつき俺の方へと身を乗り出した。
「どうしてそういうこと早く言ってくれないのよ!」
「だって聞かれてねーし」
「私、キルアには恋なんてもの分からないと思ってた…」
「酷くね?俺そんな風に思われてたのかよ」
てか、そう思ってんなら何で俺に恋愛相談なんか持ち掛けたんだよ。
何やらブツブツと文句を言いながら力なく椅子に座り直すセレナに、少しばかり加虐心が芽生えた。