eat me!!【HUNTER × HUNTER】【短編集】
第1章 不意打ち【ヒソカ】
「やぁ、また会ったね♥」
「…そっちから会いに来といてよく言うわよ、ヒソカ。」
細かいことは気にしないの、なんて言って目の前のピエロルックな此奴、ヒソカはカウンターの前に座った。いやいや気にするし…と思いながら、頭では、そういえば机の花瓶に花を生けるの忘れていたな、などと全く関係の無いことを考えていた。客が来る時はいつも飾っているのだ。一応商売なもので、こういった見栄えは気にして損は無い。
それはそうと、情報屋を職業としている私の小屋にここ最近通ってくる目の前の赤髪の男は、少し厄介な相手だった。というのも、
「今日こそは僕と闘ってくれよ♦そのために来たんだから♠」
…こうして、度々戦闘の依頼をされるのだ。
「何度頼まれてもその誘いには乗らないよ、てか乗れない。私はあんたと違って戦闘狂じゃないから、仕事以外で無駄な争い事はしたくないんだよ。」
「ふーん…まぁいいよ、僕が君をその気にさせればいいだけの話だし♠」
「ヒソカが何を言ったって変わらないよ」
「それはどうかな…♥」
「…っ?!」
目の前でずっとつまらなさそうにトランプを弄っているものだから完全に油断していた。
凝を怠っていた私は、ヒソカがバンジーガムを使ったのを見破れなかった。気づいた時にはもう遅く、人差し指から出たそれは私の顎にピタリと張り付き、次の瞬間グイッとヒソカの方に引き寄せられた。それも、カウンターから身を乗り出すような形で。
「こんなこと…ッ!して、いいと思ってんの…?!」
「そんな格好で言われても、全然怖くないけど♠」
「こんの……っ!バカヒソカ…!!」
必死の抗議だって、この間抜けな格好では何の示しも付かない。
「君が抵抗しないと、ずっとこのままだけど…どうする?♠」
"闘う以外にないだろ?"
ヒソカの目はそう言っていた。
「ッ…!闘わない…って言ったでしょ、!」
「君は可愛いな♠僕、強情な子は嫌いじゃないよ♦」
くつりと笑って揶揄ってくるヒソカに言い返そうと口を開いたが、それは叶わなかった。