第3章 謎の女性
クッキー食べます?と持ってきたカゴを差し出す。
「クッキー…??」
「あ、毒ですか?入ってませんが…」
「いやそっちじゃなく「はむぅ…らいじょーぶれす」
…………。
目の前で毒味しろとは言ってないが、勝手に1枚食べている。
なんか……話すテンポが独特というか。気の抜ける人だ。
「はい、どうぞ~」
「お、おうよ…??まあ初めて見るもんにも食いつくのが科学使いだからな!?」
クロムはそう言って差し出されたクッキーを受け取り、サクッ、と口にする。
「……んめーーー!!!なんだこれ!?」
「えへへ~、どんぐりとクルミで作ったんです」
「作り方とかどうなってんだコレ!?」
「そんなに喜んでもらえたらなら、嬉しいです~」
相変わらずのほほんとした笑みを絶やさない葵。せっかくなので、クロムは気になっていた質問をぶつける事にした。どうせ牢屋の中に居ても、する事なんて無い。頑丈な造りの牢屋だし、脱獄も無理そうだ。
「なあ。アンタってさっき『アオさん』って呼ばれてたけど……」
「ああ、あれは現代で歌手として活動してた時に呼ばれてたあだ名、ですね~。私の事知ってる人の多くがそう呼んでくれます」
「へえ…結構有名なんだな」
そう言いつつ、クッキーを小さい包みに入れて差し出されたクロムは1枚、また1枚と食べる。
「監視の奴が言ってた『してんのう』とかもそうなのか?」
「ああ、アレはあだ名では無いですね~」
「?どういう事だよ」
「四天王はですね~、集団の中で最も力のある4人を指すんです」
「……!???ゴフゥッ!!」
「え、あの……??なんか喉詰まりました?大丈夫です?」
この人が??……司帝国の中の、トップ4??
四天王、という事は他に三人居る。
司、氷月、羽京。……恐らく彼らと同じ実力者なのだろう。
やべーーー……!!!!
そんなに力あったのかこの人…見た目と雰囲気で騙される所だったぜ……!!
「あの…?クッキー不味かったです……?」
「い、いや!?」
「んん~~……あ、『四天王』が怖かったですか…!?アレは勝手に周りが言ってるだけなので~
私は石化前に司君みたいに有名だったのと、歌で癒したりしてたら気がついたらそう言われてただけでして……皆さんから慕って頂けてる、って感じです~」
本当はそんなチカラないのに申し訳ない…としゅんとしている。
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