第3章 謎の女性
******
滝に落とされる直前。何とか一命を取り留めたがーー
「羽京クン。クロム君を発見した場所は?」
「……例の奇跡の洞窟に、1人で偵察に来てたよ。
まあ狙いは硝酸かな」
「…………!?」
なんだ、コイツ…!?なんで嘘の報告すんだよ!?
クロムは戸惑う。
……その場には、彼女ーー葵の姿も無い。これで他に証言する人は居ないから助かったもののーーーー
あの葵が本当の証言をしたら?
牢に囚われたクロムは、うーん、と唸る。
あの羽京ってやつはまるで何をしたいのか分からない。無傷で話を聞く為に捕らえたかと思えば、嘘の証言でケータイ作戦を隠した。
……もう1人の発見者、葵は現代人だ。右頬の縦横をクロスさせる様なヒビがそれを物語っているし、復活者なのは間違いない。
でも、彼女自身が言った通り、とても司が復活させるような人材には思えない。
そんな事を牢屋の中で考えてると、お疲れ様ですー、と先日聞いた声がした。
「ウェエエエエエエイ!!アオさん!!おつかれーっす!!ヨー君に何か用っすか!?」
監視役のボスらしき人物が、葵に擦り寄る。
「はい~。皆さんにご飯の差し入れです~。前に好評だったドングリとクルミのクッキーなんですけど…」
「ウェエエエエエエイ!!」「やったぜ!!アオさんの手作り!!」「でもこんなとこ来たら危ないっすよ!!」
「??危ない…?どういう事です~??」
「あー、そこにいる科学王国の奴を見張ってるんだよ」
陽が指さす先には、竹の牢屋に入れられたクロムが居た。
「それはまた…!!お疲れ様です~」
「「「いえいえ~~!!!」」」
「……せっかくなので、中の人と少しお話してもいいですか…?」
「えっ」陽達、監視員が固まる。
「あーーーんーと…でもアオさんならいいのか…?四天王だし」陽がそう言うと、葵がパアッ、と顔を輝かせる。
「ありがとうございます~!……きっと狭い牢屋の中で退屈かなって思って…」
「……そっすね!流石はアオさん、優しーなー!!」陽が言うと、周りも賛同する。
お礼を言うと、葵がトコトコ~とこちらへ来る。
「…お、おう…昨日ぶりか?」
「はい~、クロム君、でしたっけ」