第13章 【番外編】 大好きな貴方に
そして迎えた誕生日当日、私はお昼を過ぎたころから早速準備に取り掛かった。普段から料理はしているものの、大好きな人の誕生日だから私も気合が入るのは当然だ。
「よし、こんなものかしらね。」
彼の帰宅予定時間の少し前くらい、料理は最後の仕上げを残して完成間近だし、テーブルの上には彼の為に用意したウイスキーボトルもある。料理に合うかどうかは置いておいて、彼がギルドでよく飲んでいるものをミラに聞いて、そのお店に行って選んだものだ。お店の人によって綺麗にラッピングされたそれを見ていると、何だか私もワクワクするものだから不思議だった。
鍵の回る音がした。
扉が軋む音と共に現れたラクサスにおかえりと駆け寄ると彼は少し驚いたようにただいまと言ってくれた。
「お誕生日おめでとう!」
「もう祝われるような歳でもねェがな。」
「あら、まだ十分若いじゃない私達。それに、貴方が生まれた日だもの。大事に決まってるわ。」
「…そうかよ。」
部屋に入っていく彼の耳は赤い。相変わらず他人からの好意に慣れていないところが可愛いと思う。本人には死んでも言えないが。
「…どうしたんだ、これ。」
「誕生日でしょ?好きなもの作ってみたの。ちょっと待っててね、仕上げしちゃうから。」
そういってキッチンに向かっていく私の後ろを着いてきて手元を興味深そうに覗き込んでいる。
「辛いの食えんのか?」
「私のは辛さ控えめにしたのよ。はい、これ持ってって。」
出来上がった料理の皿を彼に渡して持って行ってもらう。彼はそこに置いてあったウイスキーボトルに気が付いたようで手に取って眺めていた。
「こいつァ、」
「フフ、ミラに聞いたの。それ好きなんでしょ?」
「あァ、そうだ。」
ウイスキーボトルを見る目が僅かに輝いていることを認めて私も何だか微笑ましい気持ちになる。
「今開ける?」
「いや、後でいい。」
「じゃあ、食べましょうか。」
いただきます、と言って一口食べた彼はうめェと呟いた。料理の感想を言ってくれることはあまりない彼からの一言にやや驚きながらも、私の頬は緩んでしまう。
食器を洗うと言って譲らない彼に食器を拭いてもらうことをお願いしてキッチンに並び立つ。
「先にシャワー浴びちゃう?」
「…お前も一緒に行くか?」
「行かないわよっ!」