第13章 【番外編】 大好きな貴方に
「あらクレア、難しい顔して、何してるの?」
「ルーシィ、今すっごく悩んでたとこよ。」
「何それ、雑誌?しかも男性誌じゃない。」
「そう、実はね…」
何を隠そう、ラクサスの誕生日が一週間後に迫っているのだ。彼に誕生日プレゼントを渡すことなど、久しぶりすぎて何を渡せばいいのかすっかり分からなくなってしまった。
「ラクサスの好きなものかー…。それならクレアの方が知ってるんじゃないの?」
「それが、彼欲しいものは全部自分で買って来ちゃうから、欠けてるものが無いって言うか…。」
「そっかー。あ!アクセサリーとかは?クレアとお揃いなら喜んでくれるんじゃない?」
「…もう彼がくれたわ。」
「ええ!?何その話!詳しく!」
結局私が彼に貰ったイヤリングの話を洗いざらい吐かされただけだった。
コートやシャツなどの身に着けるものは万が一気に入らなかったら嫌だし、何より身に着けているところを見ているのが恥ずかしい。
そうなると後は食べ物などの消耗品が良いのだが…。食べ物でふと思い立った。
「辛いのが好きだったわね…。」
私は辛いものが苦手な部類に入るので、家で作るものは辛くないものばかりになってしまっている。彼も文句一つ言わずに食べてくれているから、何も気にしていなかったが、外食では辛いものを好んで食べているように思う。
「よし。決まりね。」
「何がだ?」
「…!?ラクサス!」
「何だ。」
「え、エバと今度どこに行こうか悩んでたの!候補が決まったなって思って。」
いきなり声をかけられて動揺したため、かなり苦し紛れについた嘘だが、どうやらこれ以上の詮索は諦めてくれたようだ。
それから約一週間、辛い料理を自分で作ったことが無い私は密かに練習した。もちろん家では出来ないから、ラクサスが仕事に行っている間に妖精の尻尾の厨房を借りた。
ルーシィやミラ、グレイ、ナツにも味見をお願いしたから、私は食べていないけど大丈夫なはず。
彼の誕生日はいよいよ明日に迫った。彼は明日の夕方に帰ってくる予定だ。ギルドには多分顔を出さないと言っていたから、直接家に帰ってきてくれると思う。