第11章 最終決戦
「行くぞ。今は家に帰ることだけを考えろ。」
「ええ、そうね。」
二人で声が示した方角に向かう。道中で次々とギルドのメンバーと合流して、私たちは着実に家に向かっている…そう思った。
「何、あれ…。ギルドまでの道が…。」
「えらく遠いな。」
黒い絨毯。そう形容するのが妥当なくらいの敵兵によってギルドまでの道は埋め尽くされていた。でも、みんなの眼には闘志が漲っている。
「モンスターは呼ぶなよ。」
「分かってるわ。」
そんな応酬をしながら敵勢を見据えて進む。私たちはこんな人たちには止められない。途中、道の真ん中に現れた巨大な初代に鼓舞され、私たちは順調にギルドまでの距離を縮めていった。
でも、戦況は芳しくない。仲間たちは時間を追うごとに傷つき、倒れていく。私は仲間を庇うことしか出来ない。
「ナブ!危ない!」
ナブのすぐ背後にまで迫っていた魔法弾を水球で弾く。すまねぇ、と言ったナブの身体には無数の打撲傷が出来ていた。
―家に帰りたいだけなのに。
一心不乱に敵兵と交戦を続けていると、みんなの制止の声が聞こえ、次いで背中を暖かな光に包まれた。
「…マスター?」
振り返った先には偉大な父の姿。そしてその父に深く頭を垂れるエルザ。
「う…そ。」
マスターが、身を挺して私たちを救ってくれたのだ。誰よりもギルドを愛した彼が、ギルドに帰れないまま逝くなんて。
「マスタァー!!!」
目から溢れる涙を止める術などなかった。口から溢れる嗚咽を飲み込める余裕などなかった。ただ私はまた、喪いたくないものを喪ってしまった。
力の抜けたマスターの肢体をそっと抱え上げて、落ち着いた声で家に連れて行ってやりたいと言った彼はどんな気持ちだろう。
「ラクサス…。」
「大丈夫、大丈夫だ。早く連れて帰ってやらねぇと。」
「うん、そうね…。」
―泣いてもいいのよ。
口まで出かかった言葉を飲み込んでそっと彼の側に寄り添う。今は彼の言う通り、マスターを家に連れ帰ってあげることが最優先だ。