第8章 開戦
「ってことで、妖精の尻尾のクレアよ。よろしくね、剣咬みの虎さん。」
「ああ、よろしく頼む。」
「クレア様はどのような魔法を使われるのですか?」
「異世界のモンスター召喚と、水の滅竜魔法を少し。」
「ええ!クレアさんもナツさんや俺らと同じようにドラゴンに教えてもらったんですか!?」
「呼び捨てでいいし敬語もなくていいわ、スティング。ええ、そうよ。リヴァイアサンからね。」
「そのドラゴンもやはり7月7日に…?」
「彼は私に事情を話してくれたけれど、彼自身の生命力が持たなかったの。イグニール達には申し訳ないと言って、私に”魂竜の術”だけを残してこの世を去ったわ。」
「そうか…。」
「それでも彼の心は…うわっ!」
突如背中に柔らかいものがぶつかって来た。それと同時にふわりと香る女性の甘い香水の香り。これは…
「ジェニー!」
「しばらくぶりね、クレア!思っていたより早く共闘できそうで嬉しいわ!」
「ええ、私もまた青い天馬のみんなに会えて嬉しいわ。」
「相変わらず神秘的な姿だね。」
「本当に妖精みたいだよね、クレアさんって。」
「別にお前のために戦うんじゃねぇからな。」
「フフ、相変わらずねヒビキ、イヴ、レン。」
天馬を離れてから気付いたことだが、私はこのギルドのことも大好きらしい。妖精の尻尾に居た期間よりもはるかに短い期間しか一緒に居なかったが、天馬は紛れもなくもう一つの家族だ。
そんな私たちの前に立ちふさがる無数の敵軍。話には聞いていたけれど、前に立つとその人数に圧倒されそうになる。
「来たわ…無尽蔵に人が湧いてくるみたい。」
「行くわよ、クレア。」
「ええ、みんな気を付けて。スプリガン12もいるかもしれない。」
「心得ている。」
「俺らの国を守るんだァー!!」
「おぉーー!!」
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。この時私は私たちの勝利を信じ切っていた。フィオーレ王国を代表する2つのギルドの総員と私が居れば、敗北することはない。そんな気持ちが心のどこかにあった。