第8章 開戦
エルザがアジィールを撃破してから数分後、西側の敵は全滅した。フリード達の所に魔障粒子キャンセラーが向かったようだったが、どうなったのだろう。そちらの方角から聞こえてきた爆発音が彼らも無事ではないことを示していた。
雷神衆がやられたことを聞いてもラクサスが冷静でいられたら良いのだけど。
それにしても東西南北の一画からの進行を防いだだけだというのに、こんなにも消耗するとは。飛行モンスターの中では比較的身軽なレイギエナがやられるとは思っていなかった。
私はリオレイアと共に林の中へと戻っていた。戦艦の砲撃は受けていないが、リオレイアも飛び回りながら火球を撃ち続けていたのだ。少しだけでも休ませてやりたい。
私はというとまだ魔法はあまり使用していないため、魔力の残量は十分にある。
「一度ギルドに戻るぞ。」
「エルザ、ナツ…。エルザのその怪我、大丈夫なの?」
「ああ、問題ねぇ!!」
「私はエルザに聞いたんだけど…。」
ナツの肩を借りたエルザが現れて合流した。
ギルドに戻ると案の定ラクサスの周りの空気は張り詰めていた。
「ラクサス…。無茶しないでね。」
「分かってる。」
「…。」
一瞬だけ合った彼の目は、座っていた。相手が可哀そうだわ。仲間を、それも彼と特に親しい雷神衆を、やられて黙っている彼ではない。
「ナツの代わりに私が南へ行こう。」
「じゃあ私もエルザやラクサスと南へ向かうわ。」
「いや、お前は北だ。」
「一人だけ違うギルドに混じれって言うの?」
「青い天馬がいるだろうが。」
「私がそっちにいると都合が悪いことでもあるの?」
「そうじゃねぇよ。」
「話にならないわ。私は南へ行くから。」
「何度も言わせるな、北だ。」
「オイオイ、夫婦喧嘩は他所でやれよ。」
「グレイ、ラクサスがいじめる。」
「オレに振るんじゃねぇ!」
「まさかクレアさんもグレイ様を…!?」
「クレアさんは北へ向かってください。」
「…初代がそう言うなら分かったわ。」
結局どうしてラクサスが私を遠ざけたいのかは分からず仕舞いだが、彼なりの考えがあるのだろう。この戦いが終わったらたっぷり時間はあるんだし、問い詰めてやろう。