第8章 開戦
「クレア、ナツたちと共に西へ行ってくれるか。」
「飛竜隊ね…。分かったわ。」
ネーミングがちょっと気に入らないとか、そういうことを言ってる場合じゃないのはわかってるんだけど、どうも気乗りしない。
「ナツ、ガジル、ウェンディ、私は皆から少し離れた場所で守備に付くわ。」
「おう!気をつけてな!」
「貴方達もね。」
一足先にギルドから出て、人気のないマグノリアを歩く。あんなにも人の声と気配に満ちた街が死んでしまったようだ。
相手は一国。みんなの前では気丈に振る舞ったけれど、現実的に考えて勝ち目などあるのか、私はまた大切なものを喪うのでは。
そんな考えが頭を支配する。ナツたちはあんなにも真っ直ぐなのに、私はやっぱり弱いままだ。
「なんてツラしてやがる、」
耳にするりと入ってくる低音。いつの間にか隣に彼が立っていた。
「ラクサス…。」
「不安か。」
「そういう貴方は、この戦争に勝つ自信しかないの?」
「そんなわけあるか。」
「え…。」
彼なら迷うことなくそうだと返してくると思っていたのに。これは予想外の返答だ。
「自信のあるなしなんて、考えるだけ無駄だ。俺はただ家族を護るために戦い抜く。」
「…フフッ。アハハハハッ!」
「オイ、何笑って…!?」
腕を組んで仁王立ちしていた彼の胸倉を思いっきり引っ張って、その唇を塞いでやる。完全に油断していた彼の体は勢いがつきすぎて、少し口がぶつかって痛いがそれもまぁ良いだろう。
唇が離れると見える彼の驚きと羞恥に満ちた表情。私からこんなキスをするのは初めてだから驚くのも無理はない。いつも振り回されてるんだから、これくらいやったっていいはずだ。
「フフ、仕返しはお互いが生きてたらね。」
「…やってくれるじゃねぇか。」
「…え?ちょっ!空気読んでくれる!?」
ここは笑って必ず生きて仕返しするって約束するところだ。間違っても私の身体を拘束するような空気じゃない。
「もちろん、終わってからもするさ。」
「じゃあ今は無くていいじゃない!」
「そいつは無理な相談だな。」
片手で私の両手首を器用に背中でまとめられて、もう片方の手は後頭部に回っている。そして彼の顔が近づく。私のささやかな抵抗も空しく、口づけはどんどん深くなる。
酸欠気味の中、音が聞こえた
―カチ