第6章 雪山に轟く
「よし、行きますか。」
道のりは決まった。あとは登るだけ。
そうして登り終えた崖の上には案の定大きな岩盤が広がっていた。想像以上に広く、ここならしばらく休めそうではあった。あたりを取り巻く気味の悪い魔力が無ければ。いや、これは魔力ではない。私のよく知った、呪力だ。
「参ったわね。」
先に上に登っていたはずのキリンの姿はなく、岩盤の奥に見えたのは粗野な雰囲気の男。こちらを見てわずかに瞠目し、何かを悟ったように口角を上げる。
「村のやつらの差し金か。」
「そんなにあっさりと自分が原因だと認めていいの?」
「お前、悪魔の因子が入ってるな?」
「…会話してくれるかしら。魔物を操っていたのは貴方ね?」
「ああ、そうだ。クレア 。」
「どこで私の名を。」
「愚門だな。冥府の門に居ておめぇを知らねぇ悪魔はいねぇ。」
「じゃあ、私の強さも知ってるってわけね?」
「知ってるが、俺との相性は…最悪ってとこだ。」
はっとした。
刹那、地面から蒼雷が襲う。
「あ”あああぁぁ!!」
油断した。彼の能力は全ての魔物、つまり私のモンスターをも操れるのだ。まだ悪魔化してもいないのにキリンが操れるとは思わなかった。
放電は止まったようだが、四肢が麻痺している。そこにすかさずキリンの重い後脚が追撃する。まともに防御姿勢を取れなかった体が難なく吹っ飛んで大岩に激突する。
「うぁっ…!」
送還と呟こうとするもまだ口が麻痺していて声にならない。
「油断したな、おめぇ。カハハッ!」