第21章 苦手を克服できたのは
バタン、と大きな音を立ててドアが閉まると同時に彼女が溜息をついた
「喧嘩するなんて、もう・・!」
「やっと居なくなったか」
そう悪態をついて部屋に戻る
あいつのことだ、おそらく数分で戻ってくるに違いない
「随分楽しそうだったな、捗って何より」
不機嫌にそう言って彼女をベッドに座らせるとその身体が緊張で固まったのを感じた
「あの、相澤くん‥?」
「嫌だったら、言って」
よく耐えた方だろ、そう呟いて唇を重ねると彼女の口から驚きの声が漏れた
「嫌、ですか」
「嫌なわけ、ない・・でも、」
「それが聞ければ充分」
言葉を遮るようにまた口付けると、紅い顔をした彼女が目を伏せる
あいつの居ない数分間
こんな風にがっつくなんて、最悪だ
今日は一日中、二人きりの予定だったのに
ゆっくり様子を見ながら進めるつもりだったのに
余裕なんてあったもんじゃない
早くこの先が、したい
彼女の手を握って引き寄せ、額を合わせると
どうにか了承を得たくて言葉を絞り出した
「眠くなったら・・、寝るんだよな」
額を合わせたままそう尋ねると、目を見開いた彼女がおろおろと慌てる
「えっと、まだ、眠くないです・・」
「おい」
空気読めよ、眠いだろ、そう言って軽く睨むと彼女が紅い顔で笑った
「相澤くん、やっぱりだめ、死んじゃう」
「俺は眠い、から一緒に寝て」
結局こんな直球の言葉しか出てこないし、彼女の答えを待つ余裕もない、情け無くて笑えてくる
「嫌だったら、言って」
もう一度軽く口付けて、固く閉じたままの唇を少しだけ舐めると
硬直した彼女の呼吸が一瞬止まった
そのままゆっくりと体重をかけ、ベッドの上に広がった長い髪に指を絡める
相澤くんの匂いがする、と彼女は恥ずかしそうに目を潤ませた
「嫌だったら言って、絶対やめないけど」
「え・・?な、んんっ」
ゆっくりと唇を喰んで舌を滑り込ませると、驚いた彼女が弱い力で俺を押し返す
絡めた感触とくぐもった声に身体中が熱くなった
「ふ、あ、相澤く、ん」
「・・・死んじゃいそう?」
「う、うん」
「そっか」
俺も、と呟いて彼女の手を捕まえる
早鐘を打つ心臓にそれを重ねると、彼女は少しだけ安堵したように微笑んだ
「すごい音、だね」
「次はめぐの番、」