第20章 待つのは思っていたよりも
「コレ返すわ!」
別れ際に渡されたのは相澤くんのクレジットカード、酔い潰れた彼の代わりにサインをしたらしい
「ふふ、今日は相澤くんに成り代わってばかりだね」
「二日酔いなら、明日のヒーロー情報学も代わってやるぜ?」
そう言ってひらひらと手を振る背中を、お礼を述べて見送る
部屋のドアを静かに開けると、リビングのソファで寝ている彼が目に入った
冷蔵庫の料理には案の定手が付けられていなくて
本当に食べないなんて、と溜息をついて保存の利くものを冷凍庫へ移す
「相澤くん、ただいま、」
お水を準備し声をかけると、彼が眉間に皺を寄せ薄く目を開いて
「帰ってくるのが・・遅い」
その不機嫌な声色に、これでも一日早めたんだけどなぁと苦笑が漏れた
「ご飯せっかく作って行ったのに」
「・・お前が居ないと食わねェって言ったろ」
そう言って引き寄せた私の手をその額に乗せる
「な、お前が居ないせいで栄養失調だ」
「本当に、子供みたいなんだから・・!」
それを聞くと彼は嬉しそうに笑った
「お風呂入ってくるね」
「俺も、入る」
そう言ってふらりと立ち上がった彼はお酒の匂いを纏っていて
「そんなに酔ってる時に入ったら危ないよ、
朝にしたら?」
「お前と入ればいいだろ」
「入りません・・!」
「俺が溺れ死んでも構わないなら、放っておけばいい」
そう言うと彼は服を脱ぎながらさっさとお風呂場へ行ってしまう
たった二日間、そう思っていたのは私だけのようで
彼の機嫌を取るにはまだまだかかりそうだと溜息をついた
「相澤くーん、大丈夫?」
とりあえず外から声をかけ続けよう、と何度名前を呼んでも彼は無言を貫く
「心配だから返事くらいし・・っ」
その瞬間、目の前で浴室のドアが開くと
ザーッと音を立ててシャワーのお湯が服に掛かった
「脱がないと風邪引くぞ」
「酔っ払い、最低・・!」
「早く来い」
そう言って熱の篭った目でこちらを見つめると、服を着たままの私を浴室へ引っ張り込んだ
「服濡れてるぞ、脱がしてやる」
「もう!誰のせいで・・」
「続きシたくて帰ってきたんだろ」
偉いな、そう言いながら張り付いた私の服を一枚一枚脱がせていく
強引で優しいその手がもう止まらないことを私はよく知っていた