第20章 待つのは思っていたよりも
「寂しかった、って言えよ」
言いたいことは色々あるはずなのに
そんな風に囁かれると結局彼の手中に落ちて
すぐに絆されるのが悔しくて
たった二日間なのに大袈裟だよ、そう答えると
私の肌の上を滑っていた手が止まった
「自分でもアホらしいと思うよ」
そう言って突然切なく揺れた瞳に、私は何も言えなくなる
急にそんな顔するなんてずるい
「・・待つのは、思ったよりキツいな」
その声はシャワーの音に掻き消されそうなほど小さくて、彼を安心させられるなら何だってしたいと、そう思ってしまう
不安気な顔を見ていられなくて、背伸びをして彼の頬に口付けた
「私明日お休みだから・・大丈夫、だよ」
一瞬驚いた相澤くんが、にやりと笑う
「何が、大丈夫なんだ?」
それはいつも通りの強気な彼で
さっきの顔はわざとだったのかもしれない、と私はまた悔しくなった
「やっぱり、なんでもない・・!」
「言わないなら、言わせるまでだ」
濡れた髪を掻き上げた相澤くんが私の背中に指を滑らせる
声が漏れる度に「洗ってるだけだろ」と笑みを浮かべる彼を睨んで、力の入らない足で意地悪な刺激に耐え続けた
「酔ってる時の相澤くんは本当にやだ・・」
「酔ってない」
「それ酔っ払いが言うやつだよ」
触れられた余韻が残るままやっとお湯に浸かると、後ろに居る彼が私の肩に口付けを落として
「そういや、山田とは何も無かっただろうな」
「・・ふふっ!」
「おい、今何思い出したのか言え」
少しだけ不安気なその表情がわざとでもそうじゃなくても、本当はどっちだっていい、どっちだって愛しい
「相澤くんは、お留守番ができないんだね」
「喧嘩売ってんなお前」
たった二日間すら、貴方をそんなに不安にさせるのなら
「お留守番は私がする、相澤くんと違って
いい子で待ってるから安心して」
その辺りの覚悟は持ち合わせているつもり、そう言って微笑むと彼の瞳が先ほどのように切なく揺れた
「いつも・・、悪いな」
「いいよ、私もたまには一人で出掛けるから」
「残念ながら次はもう無い」
こっち向けよ、余裕の無い彼が低くそう囁けば
私の身体はすぐにまた熱を帯びて
酔ってしまいそうなほどお酒の匂いのする口付けを受け止めながら
不器用で容赦のない愛に飲まれていった