第20章 待つのは思っていたよりも
「来るんじゃないのか、昔の男とか」
「・・え、?あ、!」
昔の男、と聞いた途端、分かりやすく慌てた彼女の姿に嫌な確信を得る
「来るんだな・・?」
「あの、相澤くん、違うの!」
お前がそう言う時は、大方違わない時だ
却下だそんなもん、行かせられるか
そう突っぱねようと決めて口を開こうとした瞬間
「そんなに私、信用ないかなぁ・・」
大丈夫なのに、そう悲しそうに下を向いて彼女が呟いた
そんな顔するのはずるいだろ、何も言えなくなる
お前のことを信用していないわけじゃない
「・・心配するな、行っていい」
なんて、気付くと心にもない言葉が溜息とともに口から出ていた
出発の日の朝、何から何まで気に食わない
いつも通りの服
いつも通りの化粧
いつも通りの髪型
分かっているのに
今日は随分と粧し込んでるな、なんて嫌味が口を衝いて
「外泊許してくれてありがとう」
支度を終えた彼女は俺に近づくと、背中に腕を回して微笑んだ
「お土産買ってくるから、機嫌直して」
「そんなもん買う暇があるなら、一分でも早く帰って来い」
「ふふ、愛してる」
その言葉に不覚にも眉を上げると、幸せそうに笑った彼女が口付けを落とした
「・・絆されねェぞ」
そうは言っても、愛の言葉に気持ちが軽くなるのが分かる
それが彼女にも伝わっているのが悔しくて、その身体をソファに押し倒した
「消太・・、っ」
「俺は頗る機嫌が悪い」
角度を変えながら何度も口付け、酸素を求めて開いたその隙間に舌を捻じ込む
虫除けな、と耳の下辺りに紅い印を付けると彼女が睨んだ
「祝賀会、髪上げるなよ」
「こ、こんなことしなくたって・・!」
抗議する唇をまた塞ぎスカートの中に手を這わせる
下着をずらし手を忍ばせたそこは口付けだけですでに濡れていて
可愛い奴、そう囁いて奥まで一気に指を挿れると彼女が小さな悲鳴を上げた
「やっ・・!あっ、」
「腰動いてんぞ、やらしーな」
ゆっくりと何度か指を動かすと甘い息が漏れる
彼女の身体がじわりと熱を帯びたところでそれを引き抜いた
「続きしたけりゃ、早く帰ってこい」
「さ、さい・・!」
「最低だろ、自覚してる」
下着替えた方がいいんじゃないか、そう言ってにやりと笑うと涙を溜めた目が吊り上がった