第19章 許すとか許さないとか
「やっと二人になれたのに、触れたかったのは
俺だけか」
それは悲しいな、そう言って少し目線を下げると慌てた彼女はすぐに俺の手に落ちる
「私も、したい、けど先に・・っ」
「言質は取ったぞ」
「あ、今の、わざと・・っ!?」
いつまで待たせるんだ、噛み付くように口付けると一瞬で彼女の息が上がった
それでもまだ頑なに抵抗する素振りなのは、誕生日とやらに彼女なりのプランがあるからなのだろう
「好きなもの、作るって約束、んっ」
「好物らしい好物なんて、俺には無いよ」
我ながら意地が悪い、込み上げる笑いを誤魔化すように何度も深く口付けた
「はぁっ、ちゃんと聞い、てよ・・っ、」
「後にしてくれ、今忙しい」
プレゼントだって準備してるのに・・!
そう訴える彼女を心底愛しいと思いつつ、背中のファスナーを少しだけ下ろして胸元に紅い印を付ける
「もうお前もスイッチ入ってんだろ、諦めろ」
俺が分からないと思うか、そう聞くと涙目の彼女は悔しそうに唇を噛んだ
いつもより濃い色の口紅が
口付けで滲んで酷く煽情的に見える
こりゃ俺にも色移ってんな、そう思った途端
物凄くいけない事をしている気がして
箍のはずれる音がした
「き、着たままなんて、最っ低・・っ!」
ドレスの長い裾をたくし上げストッキングをずらすと羞恥に染まった声が俺を非難する
「誕生日は何でも許される、そう言ったのはお前だろ」
「そんなこと言った記憶な・・っ」
「言葉には責任を持たないとな、薬師先生」
日付が変わるまで数時間、俺は何でも許される
「最低ついでだ、場所替わってくれ
夜までとっておいたんだ、わかるよな」
何とでも言えよ、自身のベルトに手を掛けると彼女の瞳が一瞬恐怖に揺れた
初めて見るそのカオに身体が熱くなっていく
ああ、まずいな
泣いて嫌がる顔が見たい、なんて
「な、なんか今日、目据わってない・・?」
「先に謝っておくよ」
一生に一度の機会だ、大目に見てくれ
そう言ってシャツのボタンを外すとまた彼女の瞳が揺れた
「そのドレス、似合ってる」
色の移った自分の唇を親指で拭うと
幾つか浮かんだ最低な我儘
それをこれから一つずつ、お前は許すことになる
「下自分で脱げよ、見ててやるから」