第18章 甘い策には乗ってやれ
「マイフレンドォ!イレイザー!!!
HAPPYYY!!BIRTHDA・・」
最後まで言わせず個性を消すと、十五年来の腐れ縁男が不服そうな顔をした
「ノリ悪すぎィ!」
「帰れ」
さすがの俺でも、もうちょいマシなもん想像したぞ・・
「それでは聴いてくれYEEEAH!」
そう叫ぶとこの男は、俺どころか会場の誰一人望んでいないオリジナルソングを爆音で歌い出す
生徒たちが見守る中、文字通り対面で
謎の歌を聴かされるこの時間
本格的に拷問じゃねェか・・
こいつ消していいか・・
不機嫌全開で生徒たちの方を見ると
「先生、抑えて!!」と叫ばれて
こいつらなりに何かあるんだろうが、
乗せるならもうちょいマシな策にしろ・・
そう思いつつも大人しく突っ立っている自分に、つくづく甘いと嫌気が差す
「聞き惚れちまったかァ?」
歌い終えると同時にそうほざいた山田を蹴り飛ばすと、生徒たちから叫び声が上がった
「ところでマイク、何だその胡散臭い格好は」
ハロウィンならもう終わったぞ、そう言うと立襟の黒い祭服を着た山田が首にさげた十字架をぶらぶらと見せる
「オレってば超Ohh特別な役回りなワケ!」
「答えになってねェよ、死にたいか」
そんな怖いカオしてっと、プレゼントが逃げちまうぜ?
そう言うと俺の背後を見つめにやりと笑って
「後ろを振り返ってみろって、相棒!」
るせぇな、次は何だ
やれやれと後ろを振り返った俺は一瞬にして言葉を失った
「お誕生日、おめでとう」
純白のドレスに身を包み照れ臭そうに笑うその姿に息が止まる
「私も知らなくて・・、何だかこんなことに」
編み込まれた髪は白いベールと花で飾られ、レース刺繍の施された細身のドレスが彼女によく似合っていた
「薬師先生、すっごく綺麗〜!!!」
写真を撮る音と生徒たちの歓声が体育館に響いて
「相澤先生、完全にフリーズしてる!
貴重だから撮っとこ!」
「朝のリアクションとはやっぱ全然ちげぇな!」
「サプライズ大成功ーっ!」
白いブーケに両手を添えた彼女が一歩ずつ俺に近づく
いつも渇きっぱなしの目がほんの少しだけ潤った気がした
「もう本当、お恥ずかしいです」
「綺麗、だな」
何も考えず思ったままを口にすると、生徒たちがぎゃあぎゃあと騒いだ