第18章 甘い策には乗ってやれ
「お前ら、文化祭やハロウィンがよほど楽しかったか」
そう問いかけると息もぴったり、全員同時にぎくりとする姿に呆れて溜息が漏れる
「図星か」
「いいじゃん先生ェ〜!オレたちだってわいわい青春ぽいコトしたいんすよォ〜!」
「来月はクリスマスもあるしね〜っ!」
「寮で勝手にやれよ」
俺が手放しで喜ばないのはこいつらも想定済、
馬鹿馬鹿しいと吐き捨てられるのでは無いかと
俺の顔色を伺う視線に多少の申し訳無さすら感じる
・・・馬鹿騒ぎがしたい年頃、か
まぁ、仲が良いのは悪いことじゃないよ
小声でそう呟くと生徒たちから歓声があがって
だが俺を巻き込むな、そう続けた言葉は奴らの耳には全く届かず
体育館の前方、謎の指定位置へと手を引かれるまま大人しく歩く
ったく、舐められたもんだ
こうなったら仕方がない、
彼女には後で電話でもかけて謝ろう
そしてあわよくば此処に来て貰えばいい、
エリちゃんや通形を連れてくる口実であればおそらく自然だろう、
頭を回転させそんなことを考えていると、静かな足音が俺に近付いた
「先生、早速でわりぃ」
無表情で佇む俺に轟が差し出したのは、ふざけた柄のアイマスク
「これを、俺に付けろと」
「目隠し外したらプレゼントがあって驚かせる、
そういう流れにしたいらしい」
「お前それ言っていいのかよ・・」
我ながら甘すぎやしないか、と何度目かわからない溜息をついて
受け取ったアイマスクを渋々付ける
途端に笑いを堪えながらカシャカシャと写真を撮る音が響き渡った
「今撮った奴、後で報告しろ轟」
「はい」
轟の静かな声が広い空間に響いて、自身の置かれた状況の滑稽さに改めて悲しくなる
「いやお前こっちサイドだからね?!」
「瀬呂、お前は確定な」
こいつらだって暇じゃない
こんなくだらないことに時間を割くな、と一蹴したいところだが
さすがにそれは可愛げが無いか
とことん苦手なんだよな、こういうの
「相澤先生!もういいですよ〜!!」
心底楽しそうな葉隠の声にまた大きな溜息をついて、言われた通りに目隠しを外す
いや、何なら目隠しをしたままでもいい位だ
目の前の存在なら、奴が此処に入って来た時から気配だけで分かっている