第17章 帰りたい日に限って
「「「おはようございます!」」」
「はい、おはよう」
いつもの号令の後、せーの!という掛け声で叫ばれたのは予想通りのその言葉
「「「相澤先生、お誕生日
おめでとうございます!!!」」」
「どこで知ったんだ全く、ありがとね」
まぁ出どころは二択、山田か緑谷で間違い無いだろう
「先生リアクション薄すぎ!」
「もう少し嬉しそうな顔して下さいよ!」
「・・なら抜き打ちテストでもするか、俺を喜ばせてくれるんだろう?」
俺なりの笑顔でそう持ちかけると、深い静寂が教室を包んだ
だがそれも束の間、あれよあれよと「プレゼント」なるものが教卓の上に積み上がっていく
どうしても馬鹿騒ぎがしたい年頃か・・、
猫用おもちゃ、寄せ書きされた色紙、猫缶、ゼリー飲料、猫が描かれた文房具、また猫缶、
これは奥さんに、そう言って恭しく猫耳のカチューシャを置いた峰田を縛り上げると
教師の建前と個人としての礼を述べた
「あのな、学業と関係の無いものは持ってこないように、・・でもまぁありがとね」
自分よりよっぽど嬉しそうな生徒たちに
お前らに囲まれて幸せだよ、と
口が裂けても言えない言葉が浮かんだ
———
「・・何がいいかなぁ」
放課後の保健室、書類の余白にシャーペンを走らせる
この幾つかの候補から今夜の献立が決まる見込みだ
早く帰ってきてくれたら嬉しいけれどあまり期待はしないでおこう、
小さめのケーキも買って食後にプレゼントを渡して、それから、
思わず笑みが溢れたその時、保健室の外から可愛らしい声が掛けられた
「薬師先生!
今から少し、お時間ありますかっ!?」
「麗日さん、八百万さん」
先生に折り入ってご相談が・・!そうはにかむ二人を見て、また恋愛相談かな?と目尻が下がる
「ふふ、私でよければいつでも」
「よかったぁ〜!!!」
どうぞ入って、そう勧めた私の言葉を二人は無視し
私の手を引くと突然廊下を駆け出した
「ちょ、ちょっと!どうしたの・・っ!」
「急がないと私たちが怒られますの!」
「着いたらちゃんと説明しますから!」
そう言われ、何もわからないまま辿り着いたのは仮眠室
「保健室じゃお話できないことなの、?」
そう言ってドアを開けた瞬間、あの人の声が高らかに響いた
「・・やっと来たわね!」