第11章 それは誰のせい
「コイツさ、今までどんな女が寄ってきても完全無視、まぁ自分でめぐを遠ざけたんだからそりゃまぁそうなんだけどよ」
十年よ?浮いた話ゼロ、そう得意気に余計なことを垂れた山田の足を踏みつけると、山田は声を出して笑った
「俺としてはさすがに心配だったワケ」
ここでラジオDJ発揮すんじゃねェ、念を送りながらもう一度強く踏みつける
今度は多少効いたようだが彼女の驚く声に山田が調子を取り戻していくのが分かった
「突き放したその瞬間からめぐが唯一の女になってンの、ったく、お堅くて不器用なこった」
「え、じゃあずっと・・?」
「そりゃあもう!拗らせまくってっから!」
ずっと側で見てきたオレが言うんだから間違いないぜ!なんて相変わらずの減らず口がほざいた
お前マジで覚えとけよ・・
「さァて、俺ァそろそろ失礼すっかな!そこの寝たふりショーチャン!」
「え!?寝たフリ!?」
にやにやと笑った山田がグラスの中身を飲み干し立ち上がる
「たとえオレであっても、男とめぐを二人にして寝たりできねェよ!かーあいいのよ相澤クンは!」
「・・チッ、黙れ」
「お前は最高の親友だ、の聞き間違いかなァ?HAHAHA!」
あと地味に足痛いからね?!、最後まで余計なことを言いながらその後ろ姿が遠ざかっていく
「帰れ」
「今帰ってんだろォ!?」
「早く帰れ」
ドアの閉まる音が部屋に響き終わると、バツが悪そうに床を見つめた彼女が呟いた
「寝たフリなんてひどいよ、!」
「・・そいつへのお情けで、捧げたってか」
湧き上がる自分自身への苛立ちを抑え込むように拳に力を入れると彼女が目を見開いた
「相澤くん、怒って・・」
「自分に腹が立つ、最悪の気分だ」
そもそも俺が、お前を突き放したせいだ
それでもお前が、俺を好きだったせいだ
涙と恐怖の中、俺を想いながらお前が奪われたんだと思うと死にたい気分だ
「あの・・、ごめんなさい」
「お前が謝ることじゃないだろ」
涙を浮かべた瞳がじっと俺を見つめる
助けて、こいつの心は俺にそう叫んでいたはずだ
「・・怖い思いさせたな」
顔を見られたくなくて、すっかり酔いが醒めた彼女を引き寄せ抱きしめる
ゆっくりと背中に回された腕の温かさが柄にも無く鼻の奥をつんとさせた