第9章 たまには君から
「こんなに大勢でやるんだね!」
会話を楽しむ多くの人々がわいわいとホールを埋め尽くしている
楽しいか?こんなもん・・
人混みも酔っ払いも嫌いだ、そう悪態をつくと
早めに帰るから怒らないで、と彼女が腕を絡め俺を見上げた
「ヘイヘイヘイ!
イレイザーとめぐじゃねぇか!!!
めぐ!今日は一段とビューティフォー!!
エレガント!スーウィィイイート!!
そしてセクシィィイ!!!
夜空の満天の星たちも
今宵の君の輝きには敵わないぜェ!!!」
「ふふ、ありがとう、
山田くんもとっても素敵だよ」
・・俺より多めに褒めるな殺すぞ
「後ろの殺気立った野獣さえいなけりゃ!
会場中の紳士たちが君に声かけるの間違いナシィ!」
「あら、やっぱり付いてきたのね相澤くん」
不機嫌全開で振り返ると、香山さんがにやにやと人の悪い笑みを浮かべている
「めぐ、とーっても素敵よ!
あとでスポンサーたちのところ
一緒に回ってくれるかしら?
あなたを見せびらかさなくっちゃ♫」
相変わらず目のやり場に困る過激なドレスを着て会場の視線を集めるその姿に溜息をついた
「私のセレクト最高だったでしょう?」
すれ違い様に掛けられた、自信に満ちたその声に小さく舌打ちをする
「スリットが無ければ完璧なんですがね」
「あれくらいイイじゃない、つまんない男ね」
箱で見た時には気づかなかったが、あのドレスには両側に深めのスリットが入っている
歩くたびチラリと覗く太腿に会場中の男共の視線を感じていた
・・・全員まとめて殺るか
「ねぇねぇ相澤くん!あそこにカクテルがあるから取ってくるね!」
そんなことには一切気づいていないこいつもこいつだ
「おい、ちょっと待っ」
俺から離れた瞬間に何人かの男がすぐに近寄って、命知らずなのか彼女に声を掛けた
「雄英にこんなにお美しい方がいらっしゃるとは!」
「奥にある食事も絶品でしたよ、取ってきましょうか?」
おいおい、こいつは既婚者だぞ
お前らの目は節穴か・・!
人混みを掻き分けようと控えめにあげられたその手には白いグローブ、彼女は俺のものだと主張する煌めきは今日は隠れている
念のため持参した捕縛布をちらりと見ると、俺は小さく息を吐いた
吊るされたいのは誰だ、順番に並べ・・!