第9章 たまには君から
「あー・・お前は行きたいのか?」
どう見ても不機嫌な彼がガシガシと頭を掻きながら私に尋ねた
「う、うん、楽しそうだなぁって・・」
「・・なら俺も行く」
「え!?いいの!?」
「嫁さんだけ行かせるわけにいかないだろ」
大きな溜息の邪魔をしないように、私は小さな声で喜びを爆発させた
「ありがとう、相澤くん大好き!」
項垂れた彼に飛びついて頬に口付けを落とすと、その口角が意味深に上がる
「こんなんで礼のつもりか?あと一時間で終わらせる、その後一緒に風呂、それで手を打とう」
「え!?そんなの聞いてない!」
「嫌ならいいぞ、パーティー気をつけてな」
にやりと笑った相澤くんが満足気にパソコンの前に戻ったきっかり一時間後、私は彼の作戦にまんまと嵌まることになる
「ばか!こっち見ないで!」
「おいで、洗ってやる」
「じ、自分で洗えます!」
意地悪に笑った彼の手がこちらに伸びて、あっという間に捕まってしまう
「あそう、んじゃ俺が洗ってもらおうかな」
「最低!離してよ!」
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クリーニングカバーが掛かったままのスーツを引っ張り出し、髪を纏め髭を剃る
ああ窮屈で仕方がない
だがそんな憂鬱が今、彼女の一言で吹き飛んだところだ
「相澤くん、すごく格好いい・・!」
「お前に言われると悪い気はしないね」
頬を染めて自分に見惚れる彼女を今すぐ押し倒したい衝動と闘う
こんな顔が見られるなら、たまには悪くないか
「なんだかハードル上げられちゃったな、私も着替えてくるね・・!」
おろおろと部屋を出て行く姿に笑いを堪えたその数分後、目の前に現れた彼女は息を呑むほど美しくて
「お、お待たせしました・・」
キラキラと輝く濃紺が彼女の白肌を引き立たせる
いつも下ろしている髪は高めの位置で纏められ、耳と胸元で上品に光る真珠がよく似合っていた
いつもより入念に施された化粧も、その全てが胸を締め付けて
こんなに綺麗な君を、俺は知らない
「へ、変かな・・?」
何も言わない俺を不安に思ったのだろう、彼女がもじもじと視線を落とした
「いや、誰にも見せたくないくらい綺麗だ」
なんて、柄にも無いそんな言葉が口から零れる
驚きに目を見開いて「嬉しい・・!」とはにかんだいつもの笑顔に、これも俺の知る君なんだと少しだけ安心をした