第6章 満点をきみに※
ドアの隙間から流れ込む石鹸の香り、生温い空気が鼻腔を擽る
「ふふ、大丈夫、逃げないから」
なんて、よほど俺の思うままに流されたくないのだろう、ここにきて生殺しとは
悶々とする身体を何とか落ち着かせ青いグラスの中身を飲み干す
不自然に乱れた淡い色の絨毯、あんな場所で「抱きたい」と宣った己の余裕の無さに絶望する
「相澤くんも入るかな、ってあれ・・?」
シャワーを止める音がして数分、湯気を纏い現れた彼女が俺を見て目を丸くする
窓際に置いた捕縛布を見遣ると笑いを堪えたその肩が揺れた
「部屋に戻ったの、?」
「時間は有限、交代で入るよりよっぽど合理的だ」
悪いがこっちは余裕ねェんだよ、そう言って睨み付けると彼女が心底楽しそうに声を響かせる
「そういうところ、本当に変わってないね」
———
余裕の無い彼がバルコニーを行ったり来たり、その姿を想像すると積年の恨みが少し晴らせたような気もする
耳まで赤い彼は私の腕を引いて、大きなその手に指を絡めると彼の動揺が伝わった
「ふふ、少しは落ち着いた?」
絨毯に視線を落とすと相澤くんが思い切り顔を顰めて
漏れ出た笑い声に気を悪くした彼は、視線を遮るように立ち上がると私を抱き抱えた
「、歩いて行けるのに」
「いつ逃げられるか分かったもんじゃない」
相澤くんが深い溜息を吐いて、私はまた笑みをこぼす
お詫びのしるしにその首に腕を絡ませると、彼は眉を顰めて私を睨んだ
「さて、思いっきり集中してもらおうか」
「・・それは相澤くん次第でしょ」
「へえ、言うね」
くすくすと笑みをこぼすと、もう充分だとばかりに彼が私の唇に噛み付いて
絡み合って流れ込んだシーツの上、薄紫色がギシ、と音を立てる
「・・泣いても知らないよ」
黒い服を脱ぎ捨てた彼が強気に口角を上げる、
その表情だけで逆上せてしまいそうで、それを悟られたくない私は目を伏せた
「ん、や・・ぁっ」
甘い口付けと容赦のない指先、
荒い息遣いで彼が肌に吸い付くと、少し湿った黒髪が私の肌を擽って
「相、澤くん・・っ、もう、だめ・・っ」
「、降参はナシな」
滴る彼の汗が膨らみを滑り、私は漏れ出る声を抑えようと唇を噛む
この視線からは逃れられない、激しい執着が彼の瞳に揺れるたび、私の中がじわりと甘く疼いた