第8章 いい写真だろ

「薬師先生の結婚相手は、俺だよ」

淡々と発した言葉に教室が静まり返る



(((相澤先生が、じょ、冗談を･･っ！！)))


「あ？お前ら全然信じてねェな・・・」

ごそごそと携帯を取り出し、ほれ、と写真を見せる
照れ臭そうに左手の指輪を見せる彼女が画面の中で笑っていた


「いい写真だろ」

「「「え？！ええええええ！！！」」」

静まり返っていた教室が一変して騒がしくなり、叫び声で窓硝子が割れる

「せせ、せんせ、相澤先生が結婚！？！？」
「そんな奇跡みたいなこと、ありますのね！」
「何かの個性事故じゃなくて？！」
「合理的虚偽でなくシンプルに虚偽では、」

こいつら・・俺をなんだと思ってんだ・・


「よく聞け、今後お前らのくだらない乱闘で
　夫婦の時間を邪魔してみろ
　息の根が止まるギリギリまで縛り上げられ
　ると思えよ・・・わかったら返事！」


「「「はいっ！！！」」」
(((ヒィィィィーーー！！！)))

「あと上鳴と峰田、お前らについては
　彼女に邪な感情を抱いた時点で
　除籍処分とする、次は無いぞ、いいな」


(((マジでやる顔してる！！！)))


———

「薬師先生っ！！
　相澤先生のどこに惹かれたの！？」
「いつから付き合ってたの！？」
「なんて呼び合ってるの！？」

昼休み、当然の如く女子生徒たちが雪崩れ込んだ保健室


「生徒には言わないって言ってたのに･･」

そんな呟きも掻き消されたその時、大きな音を立てて保健室の扉が開くといつも以上のハイテンションで滑り込んできた山田くんがあっという間に皆の注目を集めた



「セイ！ヘイ！女子リスナー！
　沢山のお便りセンキュー！
　このプレゼントマイクが君らの質問にィ！
　お答えしよう！」

—— 恋に落ちたのは学生時代ィ！
その後十年離れたが運命の再会＆イレイザーの猛烈アタックでフォーリンラヴ！
交際期間はなんと半日、前代未聞のスピーディー入籍だァ！
イレイザーの奴、捕まえておきたくてよっぽど余裕がねェんだな！HAHAHA！


見事に纏められた演説が爆音で廊下を突き抜ける

「さっき食堂でもやってたぜ」

「イレ先にびびらないマイク先生って、逆に一番怖いよな」



どうか彼の耳には入りませんように、と無駄を承知で祈った



「あいつ、絶対殺す・・！」