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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第1章 話しかけてもいいか


「どぉーおしたイレイザー!?
 お前ここ数日なんか変よ?話してみろってェ!親友だろhuh?」

「・・ああ、親友だな」
「・・・」
「・・・」

「オイ、完全にイカれちまってんなァ・・!
 お決まりの舌打ちはどしたァ?
 いつもの百倍は怖いぜショーチャン?」



無言で席を立ち職員室の外へ出る
校舎の裏、一人になりたい時はいつもここだ
威嚇している野良猫にダメ元で手を伸ばすが案の定逃げられてしまった



——————

「その猫ちゃん、とっても可愛いね!」

「・・おすし、って名前」

「ふふ、名前もとっても可愛い
 相澤くんにすごく懐いてる、いいなぁ」

「さ、触ってみる?」



大きな溜息とともに甦るその記憶

あの日からすでに一週間、
“わざわざ顔を出してくれたのに”
店員は彼女にそう言っていた
仕事の都合か何かで数日この街に来ていただけかもしれない

そう思ってはいるのに、毎日何かと理由をつけてはあの薬局へ足を運ぶ己に呆れる、全く以て不合理の極みだ

いくら後悔しても過去は取り戻せないと
俺は嫌というほど分かっているはずなのに





午後の演習で火傷を負った上鳴がそろそろ目覚める頃か、そう気持ちを切り替え保健室へと足を踏み出した






「——最近の子は無茶ばかりしてねぇ
 外傷の手当にどうしても時間を取られちまう、
 その分頼りにしてるよ」


来客だろうか、扉を開けると部屋の奥からばあさんの声が聞こえる




ぬるい風が開いていた窓からドアへと吹き抜け
ふわりと鼻を掠めた甘い香り


懐かしくて、苦しくて
好きで好きでたまらなかった香りが、する



そんなわけないだろ、そう思うのに

動かない自分の足がこの予感に間違いはないと告げていた








「——憧れの修善寺先生のもとで働けるなんて
 本当に幸せです、沢山勉強させていただきます」

仕切りのカーテンがシャッと音を立てて開き、ばあさんの呑気な声が響いた

「相澤先生、来てたのかい、
 あんたのとこの子ならさっさと帰ったよ」




彼女が振り返るその一瞬
ドクン、と大きく心臓が鳴る






「相澤、くん・・、なん、で、」



驚きに大きく開かれる瞳も
さらりと揺れた長い髪も
染まる頬も
やっぱりあの頃と変わらない

綺麗なままだ



「・・それは、こっちの台詞だよ」
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