第4章 ビタミン剤よりよっぽど
今日の彼女は少し違う、校内で会う時と異なる服装のせいか
「・・見慣れないな」
「ふふ、白衣の方がよかった?」
お出かけだからお洒落したのになぁ、困ったように微笑んだ彼女が首を傾げると耳飾りが揺れた
その男と会う時はこんな恰好なのか、
身に付けているそれはそいつから貰ったのか
彼女の魅力が引き立つほど、俺じゃない誰かの為に着飾るのを見せつけられているようで腹の底に黒いものが溜まっていく
「——相澤くん?大丈夫?」
ハーブティーを注ぐ手を止め、彼女が俺を覗き込む
はたから見れば恋人同士、今だけはそう錯覚してもいいだろうか
「悪い、考え事してた」
大丈夫じゃない、そう言えばお前はもっと俺のことを考えてくれるだろうか
「体調悪そう、」
無理させてごめんね、そう言うと彼女は俺の手を握りもう片方の手で俺の額に触れた
個性 ”処方”
触れた相手に必要な栄養素、心理的要素、環境的要素、あらゆる角度から分析しその者に最適なものを認識する
こうして彼女に触れて欲しくて、調子が悪いフリしてたこともあったな
後悔するから手放すな、昔の俺にそう言ってやれたらどれだけいいか
「ひどい二日酔い、栄養と睡眠も全然足りてないし精神的にもかなり不安定」
「うるさいよ」
「沢山エネルギー消費してる分、いっぱい食べていっぱい寝なきゃ」
目の前のお前を独占しているはずなのに、お前に想われる男への嫉妬で狂いそうだ
「ひとまずこれは交換ね」
カフェインの摂りすぎも良くないよ、そう言って俺に触れていた華奢な手が二つのカップを入れ替える
「こないだの夜中だって、」
そう言いかけた彼女の頬がじわりと赤く染まって、泳いだ視線はゆっくりとカップに落ちる
変わらぬ劣勢には違いないが、何処かで胡座をかいている「彼」とやら、精々高を括っていればいい
「あの時は、殆ど飲んでない」
誰かさんのせいでな、視線に熱を乗せると慌てて逸らされた目
コーヒーをひと口飲んだ彼女が焦ったように言葉を続けた
「寮に帰ったらビタミン剤も渡すからね、」
ビタミン剤よりよっぽど、お前が効くと思うんだが
なんて言えるはずもなく
「お前に出されるモンは断れないね」
そう言うと、嬉しそうに目を細めた彼女はクリームを乗せた銀色を紅い唇に近づけた