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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第5章 答え合わせをさせて



「どうしても振り向かせたい女が居るんだ、
 参考に聞かせてくれないか」


真剣なその声音が、容赦なく私の鼓膜を震わせる




振り向かせたい、ひと


ああ、そうなんだ

なんだ、そういうことだったんだ

空っぽになった心から、ゆっくりと全身が冷たくなっていく


「・・そういう、ことなら、何でも聞いて」

浅く息を吐いてそう言うと、彼は青いグラスを揺らして満足そうに笑った


私が今どんな気持ちでいるかなんて、相澤くんには関係のないことだもんね

十年以上募らせた想いの結末がこれなんて、あなたは本当にひどい




「教えてくれ、そいつのどこが好きなのか」

こんなことなら、突き放される方がずっとマシだったよ

滲んでいく視界を必死に堪えて深く息を吸う


これが私の最初で最後の告白
届かなくても、あなたを想って話すから

ちゃんと聞いててね

「彼のどこが好きか、」





自分から聞いておいて、耳を塞がないと息が止まりそうだ
上手くいっていない、別れたい、どうかそう言ってくれないか

そんな期待も虚しく、愛しい目は真っ直ぐに俺を捉え
喉から手が出るほど欲しい言葉が他の男のために紡がれる


「優しくて、強くて、努力家でね、とっても
 格好いいんだけど、不器用で可愛いの、
 一緒に居るととても落ち着くし、居ないと
 すごく寂しい、彼の顔を見るだけで私本当
 に幸せなっちゃうんだよ、好きで好きで
 たまらない、こんなに愛しい気持ち、上手
 く言葉にできないのが悔しいくらいで、」


伸ばされた大きな手が、私の頬を包みそれを拭った



「それなら何で、こんなに泣いてる」


あなたのこういう優しいところが、大嫌い


「へへ、なんだか感極まっちゃって!
 相澤くんに想われるなんて幸せな人だね、
 きっと大丈夫、受け入れてくれるよ」


辛いんだろ、幸せの涙じゃないことくらい顔見りゃわかる


「惚けてごめん、そろそろ片付けるね!」

赤い目をして笑う彼女が、別れを告げた時と重なって


それを拭いたいとか、助けたいとか、
そんな優しい気持ちじゃない



お前のその綺麗な涙を

俺以外の奴のために流すな————



「っ、相澤くん・・?」

立ち上がった震える背中を追いかけ強く抱き締める
彼女の髪に顔を埋めると、甘くて懐かしい香りが肺いっぱいに広がった
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