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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第5章 答え合わせをさせて



「お待たせしました、
 味はあまり自信ないけど栄養は満点だよ」

そう言った彼女がエプロンと髪留めを外しながら俺の前に座る
ふわりと香った甘い香りにどうしようもなく心が騒いで、それを悟られぬよう視線を下げた



なんだその照れた顔は
こっちが恥ずかしくなるだろ


「いただきます」

アクセサリーを外しラフな服に着替えたその姿は昼間よりもずっと綺麗に見えて
箸を進める俺を見て彼女はほっとしたように笑った


「相澤くんって結構食べるよね、
 生徒の皆が相澤先生はゼリーしか食べない
 って言っててびっくりしちゃったもん
 こんなに食べるのに、」



ああ、この時間がずっと続けばいい

メシの礼を言ってこのまま帰れば、明日からもこうして俺に笑いかけてくれるんだろう
そんな想いが湧き上がりつつ、ペアグラスの違和感は依然として俺の心に居座って

その男と上手くいっていないのだろうか、無闇に気持ちをぶつける前に何としても彼女の口から確かめたい



「・・なぁ、その男と知り合ってどれ位なんだ」

コイツだよ、そう言って青いグラスを揺らすとその瞳が大きく開かれて

透き通る青を凝視したまま固まる彼女に、この話題を避けたいのだと悟った



でも悪いな、俺はこの話をする為に来てる

残念ながら不可避だよ





———

相澤くんは勘違いをしている、
私に彼氏が居ると思っているんだね

そんな人いないよ、そう言えたらどれだけいいだろう


でもペアグラスの言い訳は?

彼氏も居ないのにこんなものを買うなんて不自然すぎる、あなたと使う為に買ったのだと白状するようなものだ

それはできない、だから言えないよ








俺に話題を変える気がないと踏んだのだろう、目を泳がせた彼女が小さな声を発して


「け、結構経つ、かな・・?」

何とも煮え切らないその返事に、伏せられた目をじっと見つめた


「言えない事情でもあるのか」

「へ?!何も無いよ、全然!私の話なんて
 面白くないしさ、他の話しよう、ね?」

「嫌だ」






相澤くんは絶対に何か疑っている、
私の想いにもう勘付いているのかもしれない


私、告白する気なんて無いよ

今の関係を壊したくない


何と返せばいいかわからず狼狽えていた私を静かな視線が貫いて
躊躇うように発されたその言葉が私の心に突き刺さった
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