第4章 ビタミン剤よりよっぽど
「これで全部か」
預けていたリストを一瞥した彼が、両手の荷物を見て私に尋ねる
浮き足立っていることを悟られないようにと私は意識的に眉を下げた
「本当に全部持ってもらっちゃってごめんね」
「好きでやってる、気にするな」
今日の相澤くんは少し変だ
彼らしくないとも言える今朝の数々を思い出すと、その厚意に漬け込んでいるようで申し訳のない気持ちになる
「お前と過ごしたい」
その言葉の意味を決して勘違いしないように、
そう何度も律しているはずの心とは裏腹に、新しくおろしたワンピースの裾がひらりと揺れて
充分すぎるほどに浮かれている、馬鹿みたいだ
「買い漏れが無いといいが」
「いつでも来られるから、大丈夫だよ」
「・・その時はまた呼べよ」
もうまたそうやって、私の心をぐしゃぐしゃにして涼しい顔をしている
肩を並べて歩く道、手を伸ばせば触れられる距離にもかかわらず彼と私の心は決して交わらない
「申し訳ないから、次は山田くんかな?」
「あいつと出掛けてみろ、どこでも大騒ぎになるぞ」
心底煩わしそうに相澤くんが顔を顰めて、私はまた声を出して笑う
近づけば近づくほど、かつての淡い恋は青い1ページとなって過去に留まり続けるのだ
「今日は本当に、ありがとう」
この時間は、相澤くんにとってはただの罪滅ぼし
彼が誰より律儀で優しいことくらい、よく知っているでしょう
「帰る前にどっかで休憩するか、喉渇いただろ」
「そうだね、甘いもの食べよっか!」
呆れたように微笑んだその顔は昔とちっとも変わらなくて、きゅうっと鳴った甘い音は今日の記憶と一緒に大切に仕舞っておこう
「お前が選ぶのはこれだな、賭けてもいい」
色鮮やかな写真の中、得意げに笑った彼が指をさす
まるで恋人同士、今だけはそう錯覚してもいいだろうか
「じゃあ相澤くんはこれかな、」
「コーヒーでいい」
「もう、!」
鮮やかなそれが静かに置かれて、カチャリとフォークが音を立てる
「私だけ当てられて悔しいなぁ」
「・・忘れてないよ、ひとつも」
一番幸せな時期だった、そう呟いた貴方が思い浮かべているのはきっと屋上から見たあの景色
貴方の大切な思い出の一部になれるのなら
一緒に居られるだけで充分、
自分で言った言葉なのに、涙が出そうだ