• テキストサイズ

◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第5章 答え合わせをさせて



一旦自室に戻ると、山積みの書類から急ぎのものだけを済ませて
時計の針はあっという間に約束の時刻を指していた


夕食時だ、共用スペースにも誰かが居る可能性が高い


褒められた行き方じゃないが
面倒な奴に見られるよりは幾分マシか、と捕縛布を手に取る

女性の部屋にバルコニーから侵入するなんて言語道断、ヒーローとしても教師としても一発アウト、我ながら呆れるよ





「えっ!そこから来たの!?ふふっ!」

コンコン、と外から窓を叩くとエプロン姿の彼女が急いでドアを開けた


「ヒーローらしい登場だね!」

「どう考えてもヴィランだろ」

俺の葛藤を他所に呑気に笑っている彼女の顔を見たら
こいつの前では何者でもない、ただの男なんだと思い知る



まだいくつか段ボールの残る部屋は白と薄い紫色でまとめられていて
今もこの色好きなんだな、なんて懐かしい気持ちになったのも束の間
部屋の端に置かれたベッドが嫌でも視界に入り、どうしようもなく落ち着かない

想像してはいたが、自分の免疫の無さに汗が滲む
バクバクと音を立てる心臓を落ち着かせようと数秒目を閉じた



ここからは作戦も何も無い、俺の身勝手な想いを伝えるだけだ




今夜俺は、お前が嫌がることをするだろうか

明日からもこうして、普通に接してくれるだろうか




「相澤くん? 
 あの、どうぞ、適当に座ってね?」

テーブルに並ぶ彼女の手料理が目に入る
俺の為に作ってくれたのだと思うとどう頑張っても口元が緩んで
できるだけそれがわからないように片手で隠しながら席に着いた





お水どうぞ、そう言って彼女が置いたのは先ほど買ったばかりのペアグラス

「・・お前、これ」

俺がそう言うとなぜか彼女はぎくりとして言い訳するように続けた

「あ、これ、さっき買ったやつ、可愛いから
 早速使っちゃおうかなぁって・・!」




違和感しかない、
俺が使った後に自分の男が使うのか?

いや、こいつはそんな無神経な奴じゃない


学生時代、白雲や山田に何かを渡す時は市販の菓子、俺には手作りのものだったことを思い出す
「彼氏」だった俺に対して彼女はいつもさりげなく特別を与えてくれていた

それにどれだけ幸せを感じていたか



おそらく何かある、引っ掛かった棘が何かを伝えている気がしてキッチンへと逃げる背中を見つめた

/ 168ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp