第4章 ビタミン剤なんかよりよっぽど
あっという間に着いた寮の前、相澤くんはあれからあまり口を開かない
ゆっくりと沈んでいく陽が夢の終わりを告げているみたいだ
「相澤くん、」
「お前、」
二人の声が重なると
お先にどうぞ、と彼が目で合図した
「、さっき触れて思ったんだけどね
相澤くん栄養が全然足りてないから、、
一日付き合ってくれた御礼も兼ねて
夕飯を差し入れてもいいかな・・?
も、もしご迷惑じゃなければ!!」
沈黙の中、驚きに見開かれる彼の目をちらりと見上げる
咄嗟にこんなことを口走って、ほんと自分に呆れるよ
迷惑だってわかってるのに
昔だってきっと、私のこういう所が重荷だったんだ
「・・・いいのか」
「も、もちろん!」
俺はずるい
アホみたいに無防備で、俺を信頼しているお前はきっと断らない
そう分かっていて飄々と言葉を吐いた
「・・それなら、一緒に食う方が良いと思わないか」
お前の部屋なら手間も片付けも少ないだろ、そんな風に言葉を続けながら昔を思い出して
“今日は少し悲観的になりやすいかも、
だから白雲くんたちの力を借りてね
お昼休みに一人で居ようとしないこと!”
“おい、そんなとこまで診るなよ・・っ”
俺は精神的に不安定らしいからな、一人の食事よりいいんじゃないのか、そう言うと彼女は大きく目を開いた
「・・で、何時に行けばいい」
これはさすがに強引すぎる、我ながら大胆になったもんだ、そう自嘲しつつこの機会を絶対に逃したくない気持ちが勝る
「えっと、じゃあ、」
部屋に招くことをお前が一瞬悩んだことと、少しだけその頬を染めて承諾したこと
一応男として認識されてるんだな、と些細な反応がこんなにも嬉しい
陽が沈み、紫色の空がゆっくりと黒く変わっていく
「相澤くんも、何か言おうとしてたよね?」
「ああ、なんだったかな、忘れた」
こいつの無防備さには男もさぞ苦労していることだろう
彼女のことが本当に大事なら、悪い虫が付かないように見張らないとな
俺なら絶対にこんな隙は作らせないよ、と得体の知れない奴に宣戦布告をした
「私が先に言っちゃったからだ、ごめんね」
慌てる彼女の表情に笑みが零れる
見つめたその瞳は変わらず美しくて、俺は目を伏せた
「思い出して、後でちゃんと言うよ」