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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第4章 ビタミン剤なんかよりよっぽど



「——相澤くん?大丈夫?」

ハーブティーを注ぎながら彼女が俺の顔を覗き込んだ

「ああ、悪い、考え事してた」
大丈夫じゃない、そう言えばお前はもっと俺のことを考えてくれるだろうか


「体調悪そう・・、ちょっと失礼するね」

そう言うと彼女は俺の手を握り、もう片方の手で俺の額に触れる


個性 ”処方”

触れた相手に必要な栄養素、心理的要素、環境的要素
あらゆる角度から分析しその者に最適なものを認識する

こうして彼女に触れて欲しくて、わざと調子が悪いフリしてたこともあったな
後悔するから手放すな、昔の俺にそう言ってやれたらどれだけいいか



「やっぱり二日酔いだよね・・、頭痛ひどいし
 疲れもかなり溜まってる、栄養、睡眠、
 足りてないものだらけ
 精神的にも不安定、もやもやしてる」

「・・うるさいよ」

お前を独占しているはずなのに、お前に想われる男への嫉妬で狂いそうだ



「とりあえずこれは交換ね!カフェインはやめて、少しでもリラックスできるものにしよう?」
帰ったらビタミン剤も渡すから、と俺に触れていた愛しい手がハーブティーとコーヒーを入れ替えた



ビタミン剤なんかよりよっぽど、
お前が効くと思うんだが


なんて言えるはずもなく


「・・お前に出されるモンは断れないね」

そう言うと彼女はとても嬉しそうに笑った


———


並んで歩く帰り道、彼女がふと足を止める
目線の先には上品な食器がオレンジの夕陽に煌めいて

「可愛い・・」、そう言って彼女が手に取ったのはガラス細工が施されたペアグラス
薄いブルーとピンクのそれは大きさもデザインも若干異なる、明らかに男女で対になっているもので


おいおい、せっかくのハーブティーが出そうだ


「ごめん、これだけ買ってくる!」


お前が他の男と使うモンなんざ見たくねェよ、喧騒の中に最大級の溜息が落ちた








一目惚れしたペアグラス、もし私の部屋に来てくれることがあったらしれっと使ってもいいかな・・なんて

そんな日は来ないとわかっているのに


同僚以上にはなれない、望まない、そう決めたんじゃなかったの
精神的に不安定なのは私の方だ


でも見るたび今日を思い出すだけなら、彼の迷惑にはならないはず
そんな苦しい言い訳を心に落として、少しだけ潤んだ視界が目の前のグラスを更に綺麗に見せた
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