第30章 もう間違えない
蜂蜜を絡めるような甘い口付けに酔いながら、愛しくて苦しい香りが肺を満たしていく
肩で息をする私を満足気に眺めた相澤くんは、すっかり冷えきったテーブルの上の缶コーヒーを一瞥した
「どこ食っても、甘いな」
「んあっ、そ、こだめ・・っ」
「嫌なら逃げればいい」
押さえる力は決して強くは無くて、その気になれば振り払えるような優しい手付きが憎らしい
余裕綽綽と見下ろすその視線が悔しくて視界がじわりと滲んでいく
「こうされるのが、好いんだろ」
「そ、んなこと、・・ん、ぁあっ!」
「あんまり煽るな、優しくできなくなる」
優しかったことなんて無いじゃない、絞り出した精一杯の嫌味ごと甘い口付けに呑み込まれて
薄く開いたその眼の奥に欲が揺れる
徐々に余裕を失っていくその姿がたまらなく好きで、荒く掠れた吐息が私の鼓膜を震わせた
「めぐ、愛してる」
「お前は、俺の」
低く甘い声が頭を狂わせて、零れ落ちた一雫すら逃がさないと彼の唇が頬を滑る
「欲しいって言えよ、お前の言葉で聞きたい」
真っ直ぐに見つめた目が意地悪に細められると、一生敵いそうにない憎らしいその唇に私は甘く噛み付いた
「相澤くんだって・・限界なくせに・・」
余裕そうな顔してずるい、睨みつけた視線は案の定あっさりと囚われる
本当はもう少し可愛い一言で誘いたかったなんて、そんな私の後悔すら彼には隠せていないと思うとまた悔しくて
目を伏せたまま彼のベルトに手をかけた
「・・ほんと、可愛いな」
「〜〜!」
「お前の言う通り、もう我慢できそうにないよ」
余裕があるように見えてるならそりゃよかった、掠れた声が耳元で響くと同時に熱が身体を貫いて
容赦のないその律動に私は声を枯らしていく
「しょ、消太・・っ、や、激し・・っ」
「そうやって呼ばれると、手加減できない」
お前わかってて煽ってんだろ、恨めしそうにこちらを睨んだその顔に私は少しだけ気分が良くなった
「ふ、消太のそういうところ、かわいい」
「・・・へえ」
片眉を上げ不敵に笑った相澤くんが乱暴に髪を掻き上げるとスプリングがギシ、と音を立てて
緩やかなリズムがまた速まると、逃げようとした私の腰を彼の両手がいやらしく掴んだ
「や、っあ・・んんっ、ぁあっ!」
「それじゃ、遠慮なく甘えさせてもらうよ」